筋膜性疼痛症候群とは?
肩こりや腰痛などの慢性的な痛みのみならず、さまざまな分野で原因不明とされてきた症状が『Fascia:ファシア(筋膜など)の癒着』に起因する可能性が世界で注目されています。
『Fascia:ファシア』とは:すべての臓器、筋肉、骨、神経を取り囲み、互いをつなぎ合わせている組織。その中に筋膜が含まれます。
『筋膜性疼痛症候群』 は、『痛み』を主な症状とする 世界でもっとも一般的な痛み症候群 です。
癒着をおこしたファシア:筋膜(写真右)に形成された『トリガーポイント:過敏化した受容器』が、交感神経の過緊張と相まって『疼くような痛みやコリ感、手足のしびれなど』さまざまな症状を引き起こします。
筋膜は、「クリープ(ゆっくり動く)」という性質を持っています。
筋膜における「クリープ」は、負荷のかかった状態では、時間の経過とともに形を変えていく性質です。
筋膜が正常であれば、負荷が取り除かれると元の形に戻ります。
ところが、加齢とともに毎日同じ姿勢を続けていたり(デスクワークなど)、同じ動作を繰り返したり(オーバーユース)すると、筋膜がそれに順応するように時間をかけて変形して、元の形に戻りにくくなってしまいます。
このような状態になると、筋膜は厚みを増し、滑走性(滑り)が低下します。
これが『筋膜が癒着した状態(タンパク質の増殖)』であり、ここに『トリガーポイント』が形成されます。
筋膜には、痛み信号を発信するするセンサー(神経終末)が豊富にあるため、発痛物質を感知すると、痛み信号が脳に送られて『痛い…』と感じるのです。
慢性的な腰痛がある人は、腰痛がない人と比べて腰の筋膜(胸腰筋膜)が約25%厚くなり、筋膜の滑走性(滑り)が低下することがわかっています。
トリガーポイントは、最新の定義では『過敏化した受容器(じゅようき)』とされています。
『受容器』とは、からだの至る所に備わっている『痛み信号を脳に発信するセンサー』です。
『過敏化』とは、通常では反応しない刺激に対しても、反応しやすくなっている状態です。
※ この痛みセンサーは、脳や脊髄、関節の軟骨や椎間板、髪や爪などにはありません。
トリガーとは『引き金』という意味で、トリガーポイントが存在する場所から離れた部位に痛みやしびれなどの症状を放ちます。
精神的または身体的なストレスが、トリガーポイントを瞬時に活性化して症状を自覚させます。
筋膜性疼痛症候群の症状は、適切な処置をほどこさない限り何ヶ月から何年も存在し続けます。
トリガーポイントは下のイラストのように、からだのどの部分にもおこり、慢性化していくとしだいにその箇所は増え、痛む範囲も広がっていきます。
このポイントは代表的なもので
発生する部位は100箇所くらいあります。
また、痛み以外にも、下のイラストにあるような 抑うつ・疲労感・睡眠障害・めまい・耳鳴り・息苦しさ・動悸・下痢・便秘・吐き気などの胃腸の不調・頭痛・肩こり・手足のしびれ・腰痛・背中のはり などの 『心身反応』 をともなうことが多く、じつに多様で枚挙のいとまがありません。
※ People who suffer from excessive muscle pain often have a medical history littered with other conditions that are caused or particularly sensitive to stress (e.g. ulcers, panic attacks, insomnia, irritable bowel syndrome, etc).
「筋肉の痛みに悩まされている人は、病歴の中にストレスが原因となっているものや、ストレスに敏感なものが含まれていることが多いです。(例:潰瘍、パニック障害、不眠症、過敏性腸症候群など)」(筋肉の痛みとは、筋膜性疼痛症候群のことです)
筋膜性疼痛症候群『Myofascial Pain Syndrome(MPS)』は、1982年にアメリカで発表された『筋膜の医学』です。
ケネディ大統領の主治医であった Janet G.Travell 医師(1901〜1997)と David G.Simons 医師(1922〜2010)によって提唱されました。
※ “Myofascial pain syndrome” was first thoroughly studied by Drs. Janet Travell and David Simons. In their explanation of MPS, physical stresses and/or emotional stress triggers a vicious cycle, a trigger is basically a tiny cramp or spasm: a patch of muscle clenches, choking off its own blood supply, resulting in oxygen and nutrient deprivation and stagnant tissue fluids that irritate sensory nerves and perpetuate the cycle.
「『筋膜性疼痛症候群』は、ジャネット・トラベル博士とデビッド・サイモンズ博士によって初めて徹底的に研究されました。博士たちの説明では、身体的ストレスや精神的ストレスが悪循環を引き起こすとしています。トリガーとは、基本的には小さな痙攣やスパズムのことで、筋肉の一部分が固まることです。血液の流れが妨げられることで酸素や栄養分が不足し、組織液が滞って知覚神経を刺激するというサイクル(悪循環)が繰り返されます。」
※ One of the simplest ways to diagnose trigger points is just by elimination : if there is no obvious trauma, then trigger points are more likely to be involved. Obviously there are other possibilities.
「トリガーポイントを診断する最も簡単な方法の一つは、
※他の可能性とは:外傷以外の悪性腫瘍・リウマチ・帯状疱疹による痛み(神経痛)・感染症・痛風・偽痛風 などの炎症性疾患です。
トリガーポイントはレントゲンやCT・MRIなどには写らないので、高価な設備による検査は必要ありません。
皮膚の上からトリガーポイントを触れると「生茹でのマカロニ」のようです。
その大きさは大小さまざまですが、筋膜が癒着をおこした影響によりリンパや静脈の流れが渋滞しているため、その周囲はむくんでいます。
グイグイと強く押せば消えてしまいそうですが、押せば押すほど過敏になってしまうので、力任せの強い刺激は禁物です。
※ https://www.painscience.com より
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