そよ風 note
慢性的な腰痛が改善しない、根本的な理由
先日、慢性的な腰痛でお悩みの60代の女性が来室されました。
これまで3つの整形外科を受診し、レントゲンやMRIの結果から「変形性腰椎症(加齢による背骨の変形)」「椎間板ヘルニア」「脊柱管狭窄症」などと診断されたそうです。
医師からは「手術をするほどではない」と言われて安心はしたものの、痛み止めを飲んでも理学療法(電気や牽引)に通っても腰痛は一向に改善せず・・・半ばあきらめかけていたといいます。
そんな中、娘さんがしまだのHPをご覧になり、「お母さんは、これ(筋膜性疼痛症候群)だよ、ここだよ」と確信して来室されたとのことでした。
慢性的な腰痛が改善しない、根本的な理由
この女性のように、処方された薬を飲みながら理学療法に通っても、多くの慢性的な腰痛(に限らずですが・・・)は、なぜ改善しないのでしょうか?
その もっとも根本的な理由 を、ある本の中で、とてもわかりやすいたとえで説明している一節がありましたので、ご紹介します。
** 引用:『複雑な症状を理解するための トリガーポイント大事典』より **
> 現在の医療には、失望させられる場面に遭遇することがあります。
> 時には、無駄とさえ感じるかもしれません。
> 例えば、慢性的な腰痛がある人が医療に頼ろうと決心したとします。
> 広範囲にわたる高価な検査を受けた後、「どうやらあなたには慢性的な腰痛があるようです。しかし、40歳を過ぎれば、誰でも腰に何らかの病状があるものです。」と告げられるかもしれません。
> この医療従事者は、MRIなどの画像により腰部の状態を観察し、目に見える病態が症状を引き起こしていると信じ切っています。
> つまり、画像に映ったものを治療しようとしており、患者自身を見ようとしていません。
> また、画像には映らない軟部組織には目を向けられません。
> そのため、画像検査では正常に見えても、患者は痛みを感じています。
> このように、画像検査などでわかる病態が患者の症状を引き起こしているとは限りません。
> これは、電話の写真を見ればそれが電話だということがわかりますが、写真からはその電話が鳴っているかどうかはわからないことと同じです。
> 電話そのものをよく観察しなくてはならないのです。
出典:『複雑な症状を理解するための トリガーポイント大事典』
著:Devin J. Starlanyl /John Sharkey
監訳:伊藤和憲
翻訳:皆川陽一・皆川智美
緑書房 2017年
『電話の写真を見ればそれが電話だということがわかりますが、写真からはその電話が鳴っているかどうかはわからないことと同じ』ように
『レントゲンやMRIなどの画像を見れば背骨の変化やヘルニア、脊柱管が狭窄しているということがわかりますが、画像からはその患者さんが痛みを感じているかどうかはわからない』のです。
ですので。
私たちは、患者さんの 痛みストーリー を伺いながら身体をよく観察(触診)して、画像には映らない、患者さんが痛みを感じる原因となる軟部組織(筋・筋膜)の問題 『トリガーポイント』を探し出さなくてはならないのです。
施術後、女性は「希望がみえた」と笑顔で帰宅されました。
これまでに5回の施術を受けていただきましたが、「腰の痛みがとても楽になった」と施術者冥利に尽きる言葉もいただきました。
私たちが道案内を間違わなければ、多くの患者さんは希望する結果に辿り着くことができます。
けれど、もしも間違った道を案内してしまえば、行き止まりか、時には引き返すことのできない結果に辿り着いてしまいます。
「こむら返り」 と 「下肢静脈瘤」 と 「膝の痛み」
女性の左脚を触診したところ、いくつかのトリガーポイントと思われる圧痛点は確認できたものの、膝下から足の甲にかけての静脈が腫れて拡張し、コブのように浮き上がっていた。
この所見から、こむら返りの原因は下肢静脈瘤が強く疑われたので、施術は行わず、静脈瘤専門のクリニックをご紹介して帰宅していただいた。
後日、検査で静脈瘤が確認され「大伏在(だいふくざい)静脈(太ももの内側から足首まで、皮膚のすぐ下を走る静脈)の血管内塞栓術」を受けた後は、『こむら返りはすっかりなくなり、足も軽くなった』との報告をいただいた。
そして。
『実は(左)膝も痛かったが、痛くなくなった』と仰っていた。
先日の「日経メディカル」には、「下肢静脈瘤の治療で変形性膝関節症の膝痛が改善」という記事が掲載されていました。(これは、弾性ストッキング着用による治療です)
とにかく、よかったです。
下肢静脈瘤に関して、20年以上前にある医師から教わったこと
・静脈瘤になってしまったら、悪くなることはあってもよくなる(治る)ことはない
・放置すれば重症化する可能性がある
・疑わしい症状を見つけたら、速やかに専門医に紹介する
・重症化を防ぐには、早期治療が大切である
・診断には、超音波による検査が必須である
以後、下肢静脈瘤が疑われる方には専門医の受診を勧めていますが、結果的に静脈瘤と診断される方は、異常なしとされた方よりもはるかに多いです。
「こむら返り」 について
◾️『こむら返り』とは
主に、ふくらはぎの筋肉が異常に収縮して痙攣(けいれん)を起こす状態です。
強い痛みを伴いますが、多くは数分でおさまります。
「こむら」とはふくらはぎのことですが、足の裏や指、太ももなど、体のどこの筋肉でも起こります。
◾️ 筋肉が異常に収縮する原因
・筋肉の制御機能の低下
筋肉には、筋肉の伸張(伸びすぎ)と収縮(縮みすぎ)を調整するセンサー(筋紡錘と腱紡錘)がありますが、縮みすぎを防ぐ腱紡錘の働きが低下すると、筋肉が異常に収縮して痙攣を起こします。
・マグネシウム不足
マグネシウムは、カルシウムやカリウムの働きを調整して、筋肉の正常な動きを保つために不可欠です。
マグネシウムが不足すると、腱紡錘の働きが低下します。
・脱水、冷え、妊娠、加齢など
発汗による水分とミネラルの喪失や血行不良が、腱紡錘の機能を低下させて痙攣を誘発します。
◾️ 起こりやすいタイミング
・運動中
多汗による脱水、準備運動不足、筋肉疲労など
・就寝中
就寝中はつま先が伸びてふくらはぎの筋肉が縮んだ状態にあるので、筋肉が刺激を受けると収縮しやすいため
・妊娠中
ミネラル不足になるため
・加齢
60歳以降は腱紡錘の機能が衰えるため
◾️ 予防法
・ミネラル補給
マグネシウム:海藻類、ナッツ類など
カルシウム:乳製品、大豆製品、小魚など
カリウム:いも類、バナナ、キウイなど
・水分補給
運動中はスポーツドリンクなどで水分とミネラルを補給しましょう。
就寝前にはコップ一杯の水を飲むことも有効です。
・冷え対策
靴下の着用などで保温
◾️ 注意すべき場合
それでも就寝中にこむら返りを繰り返す場合は、下肢静脈瘤、肝硬変、甲状腺機能低下症、腎不全、糖尿病などの病気 が隠れている可能性があるため、静脈瘤専門のクリニックや循環器内科 などの受診をお勧めします。(利尿剤や下痢による脱水も誘因になることがあります)
下肢静脈瘤が重症になると、こむら返りは起こりにくくなるそうです。
「こむら返り」 と 「骨盤の歪み」
先日、患者さんからのご紹介で、左脚の「こむら返り」にお悩みの70代の女性が来室された。
もともと就寝中に足がつることは時々あったが、2〜3ヶ月前から頻繁に起こるようになったとのことだった。
「年齢のせいで筋肉が硬くなってしまったからかもしれない」と思い、自宅近くの整骨院を訪ねたところ、『骨盤が歪んで脚の長さに差が出ているから、このままでは歩けなくなってしまう』と言われたそうだ。
歩けなくなっては困ると不安になった女性は、お得だと勧められた回数券を購入して「骨盤矯正」を10回ほど受けたが、症状はまったく改善しなかった。
にもかかわらず、『あなたの骨盤の歪みは特にひどいので、もっと効果的な施術が必要だ』と、さらに高額な回数券の購入を勧められたが、女性は納得がいかなかったので断ったとのことだった。
このような「リピート & アップセル」が目的の「骨盤の歪み商法」は、整骨・整体業界では「ビジネスモデル」などと称されていますが、実態はただの「煽り商法」にすぎません。
「情弱ビジネス」とも呼ばれていますが、整骨・整体(個人・チェーンを問わず)業界に広く浸透しているのが実情です。
このような商法は、「初回割引(今だけ・◯人限定など)」⇨「不安を煽る説明(このままでは危険)」⇨「回数券販売(長期・高額)」の流れになっています。
・医学的な見解では、骨盤は強靭な靭帯と関節によって安定しており、骨折などの明瞭な損傷がない限り「歪み」が生じることはありませんが、整骨・整体的な見解では、簡単に「歪み」が生じます。
・「骨盤矯正」という用語は、「歯列矯正」のように医学的に定義されたものではなく、整骨・整体で用いられる非医学的な(ビジネス)用語です。
詐欺被害にご注意ください
今朝、調布警察署の刑事さんお二人が、このお知らせ(スタンド付き)を持ってきてくれた。
お話によると、調布署管内でも、警察官をかたる詐欺被害が急増しており、被害は高齢者に限らず、若い世代にも広がっているとのこと…
そのため、注意喚起として待合室などに設置してほしいとのことだった。
警察官をかたる詐欺電話、急増中!
ニセの警察手帳、逮捕状に注意せよ!!
みなさまも、詐欺被害に遭わないよう十分ご注意ください。
不審な電話や訪問は、すぐに警察や家族に相談しましょう!