痛みのホント その① 2つの痛み
『痛み』には、すべての人に共通した『痛みの生理学』があります。
痛みやしびれを感じる部位や程度は人によって異なりますが
そのしくみは『みな同じ』です。
慢性的な痛みやしびれでお困りの方が
ご自身にとって『最適な治療や施術を受ける』ためには
そのしくみを知ることは、とても大切なことです。
慢性疼痛(慢性痛)が 1986年の国際疼痛学会で定義され
『痛みの生理学』は飛躍的に発展しました。
慢性痛の研究が進むにつれて
『痛みを知る(正しく理解する)』と
『痛みをコントロールできるようになる』ことがわかってきました。
また。
『痛みを誤って理解している(させられている)』と
『痛みの慢性化(痛みの悪循環)に拍車がかかる』こともわかりました。
『痛みを知る』ということは『痛み治療の一つ』でもあり
ヘルスリテラシーを高めて
大切な『身体とお金を守る』ことができるようになります。
『痛みのホント』その ① 〜 ⑤ が
いつまでも どこへ行ってもよくならない
慢性的な痛みやしびれでお困りの方の一助となれば幸いです。
『痛みのホント』
その①『2つの痛み』
その①『2つの痛み』
一口に『痛み』と言っても
痛みにはしくみの異なる『急性痛』と『慢性痛』があります。
この2つの痛みは
痛みを生じる原因も脳に伝える神経(痛みセンサー)も異なるので、対処法も異なります。
『急性痛』とは
身体のどこかが傷ついたり、何らかの理由で組織が炎症を起こしたりした時に感じる
『鋭い、どこが痛いのかはっきりした痛み』です。
例:転んで膝をぶつけた、指を切った、歯を抜いた、風邪をひいて喉が痛い、骨折をした など
このような『炎症がある痛み』は
・怪我をした(炎症を起こした)ところをよく冷やす。
・血行が良くなることは避ける。(入浴や運動、飲酒や辛い食べ物など)
・消炎鎮痛剤がよく効きます。
・とにかく安静です。
・日にち薬です。
誰もが経験したことのある、病気や傷にともなう『症状としての痛み』なので
傷や病気が治れば痛みも役目を終えて消えていきます。
また、急性痛は『痛みの大きさと経過日数』はほぼ比例するので
痛みがいつ頃消えるのか予測することができます。
下図「急性痛と慢性痛の経過の違い」を参照してください。
※ すべての炎症は痛みを伴いますが、すべての痛みが炎症を伴うわけではありません。
ギックリ腰や寝違いなどは
ある日突然に起こる痛み(急性痛)ですが
炎症を伴う(傷の)痛みではないので即時改善が可能なのです。
※ 急性痛と慢性痛を比較した『例え』です。
『慢性痛』とは
3ヶ月〜6ヶ月以上(数ヶ月〜数年)にわたって続く
『ズーンという、鈍い、うずくような、(急性痛ほど)どこが痛いのかあまりはっきりしない痛み』です。
例:筋膜性疼痛症候群、頭痛(主に緊張性頭痛)、慢性腰痛、肩こり、ひざ痛、四十肩、いわゆる坐骨神経痛 など
※ 病院では、背骨の変形や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、関節の軟骨がすり減っている、などの診断を受ける場合があります。
このような『炎症がほぼない痛み』は
・冷やさずに温める。
・血行が良くなることを積極的におこなう。(入浴や体操、ウォーキングなど)
・消炎鎮痛剤は、あまり効きません。
・安静よりも、できるだけ動く(行動)です。
・日にち薬も効きません。
誰もが経験する訳ではない、けがや病気が治っても痛みが消えない、いくら検査をしても異常がないなど
急性痛とは異なる『ちょっと複雑な痛み』です。(痛みの生理学では『複雑系』と言います)
慢性痛は、日によって痛みの大きさが変化することもありますが
『痛みの大きさと経過日数』は比例しないので
痛みがいつ頃消えるのか予測することができません。
上図「急性痛と慢性痛の経過の違い」を参照してください。
また、慢性痛は急性痛とは痛みを起こすしくみが異なるので
急性痛にはよく効く鎮痛剤も効かない場合がほとんどです。
そして、急性痛と大きく異なる点として
慢性痛は以下の要因が相互に絡み合っています。
・身体的な要因
トリガーポイント(過敏化した受容器)
・心理的な要因
『 不安・悩み・悲しみ・怒り・恐怖・抑うつ 』 などの精神的なストレス
『痛み』そのもの(痛みに対する誤解)もストレスになる。
・社会的な要因
まわりの人との人間関係(親子や夫婦の関係、職場の環境や人間関係など)
いつまでもよくならない痛みが、人間関係を悪化させることもある。
・睡眠(障害)
不眠、中途覚醒(断続的な睡眠)など
不眠症の方は、慢性的な痛みを伴っているケースが多く
慢性的な痛みを抱えている方は、睡眠障害を伴っているケースが多い。
(睡眠の量や質の悪化が、痛みの再発や程度と関係している)
これは、慢性的な痛みやしびれが一元的なものではなく
多元的なもの(複雑系)であることを示しています。
(これらの要因が占める割合は、人によって異なります)
慢性的な痛みやしびれは
『心と身体が相互に絡み合った結果(心身反応)』と捉えると
期待する結果を得ることができるようになります。
心的なストレスを
トリガーとして現れうる
主な『心身反応』
このような心身反応は、時として習慣化することがあります。