そよ風 note
画像検査で 「わかること」 と 「わからないこと」
3ヶ月ほど前から
左腰 〜 左脚の痛み(歩行困難・10分も歩くと脚が痛くなる)でお困りの60歳代の女性が
山梨から来られている。
症状の始まりは去年の春。
ある日突然腰痛がひどくなり整形外科を受診したところ
レントゲン検査の結果「脊椎すべり症 ※」 と診断されたそうだ。
※ 脊椎すべり症はレントゲン(腰椎側面)を見れば
誰でもわかる所見ですが
それがいつからすべっているのか(腰痛がひどくなった日なのか、何年も前からなのか)は
誰にもわかりません。
そして
それはすべりに限らず、背骨の変形や椎間板の狭小化、ヘルニアや狭窄も同じです。
圧迫骨折でさえ、わかりにくいと言われています。
その後はしばらく小康状態だったが
今年の1月に再び腰の痛みがひどくなり
歩くことも困難になって整形外科を受診したところ
今度は「狭窄症」と「すべり症」と診断されたそうだ。
その後はペインクリニックにも通うが最後に受診した整形外科では
首(?)と 腰 の 「レントゲン と C T(?)」と 「筋電図(?)」 の結果
『あなたは首と腰が悪いが、まず首を手術して様子をみましょう』と言われ
友人(私の患者さん)に話したところ、私を紹介されたとのことだった。
しまだに来られた時は
10分歩くと脚が痛くて歩行も困難だったが
・9月13日にいただいたメッセージ
1ヶ月後には
10,000歩(2時間近く)も歩けるようになっている。
・10月13日にいただいたメッセージ
メッセージは患者さんの許可を得て掲載
この女性が、腰痛と脚の痛みでほとんど出歩けなかったことを知る周りの人は
最近では、この女性がスタスタ歩いているとびっくりして声をかけてくるという。
レントゲンやMRIは病理所見(骨折や腫瘍など)を診るもので
痛みやしびれ(患者さんが自覚する症状)を読影できるものではありません。
どういうことかと言いますと
レントゲンやMRIを見て
たとえ背骨の変形や椎間板の狭小化、すべりや分離、ヘルニアや狭窄などが確認できたとしても
その人の症状(腰が痛いのか、脚がしびれているのか)は、わからないのです。
患者さんの痛みを確認して治療するポイントを決めるためには
触診で
『トリガーポイント(過敏化した受容器) = 圧痛 = 治療するポイント』
を隈なく探し出すことです。
骨折や腫瘍などによる 危ない腰痛 ではない場合、治療にレントゲンやMRIは不要です。
「腰痛」第2版(医学書院) には
レントゲン(単純X線)写真について、以下のように書いてあります。
単純X線写真は、外来診療で最も用いられている画像である。
しかし、単純X線写真は、非特異的腰痛の診断にはほとんど意味がない。
現時点での退行性疾患の診断における単純X線診断の位置付けは限定的なもので、
感染性疾患などを含む脊椎炎、骨折、あるいは腫瘍のような重篤な病態を否定するためにあると言ってよい。
また
横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック 診療教授 の北原雅樹医師は
著書「日本の腰痛 誤診確率 80%」の中で
・痛み治療、特に腰痛の場合、レントゲンはほとんど意味がありません。レントゲン検査に意味があるのは、骨折などの場合です。
・欧米では交通事故のときなど、骨折などを調べるのに急を要する場合以外はレントゲンを撮ることはまずありません。
・急性、慢性を問わず、私は腰痛の患者さんのレントゲン写真は撮りません。意味がないからです。痛みはレントゲンには写りません。
・・・(もう一点、レントゲンによる被曝の問題もあります。)
・痛い人、痛くない人、1000人のレントゲン写真を撮って専門医に見せたとしても、この人には痛みがある、この人にはない、ということはわかりません。
と書かれている。
私の腰椎(L5/S1)にはヘルニアがありますが
慢性腰痛も脚のしびれもありません。
私は、自分の腰のMRIが見たかったので
嘘の症状(腰が痛くて右脚がしびれる)を告げてある病院を受診したとき
私のMRIを読影してくれた先生は
(お忙しい中、申し訳ありませんでした・・・)
『椎間板ヘルニアですね』
『坐骨神経痛ですね』
と説明してくれたが
『あなた、本当は腰痛くないよね?』
『脚もしびれてないよね?』
とは言わなかった。
ということです。