そよ風 note

2025-07-05 18:00:00

慢性的な腰痛が改善しない、根本的な理由

 

先日、慢性的な腰痛でお悩みの60代の女性が来室されました。

 

これまで3つの整形外科を受診し、レントゲンやMRIの結果から「変形性腰椎症(加齢による背骨の変形)」「椎間板ヘルニア」「脊柱管狭窄症」などと診断されたそうです。

 

医師からは「手術をするほどではない」と言われて安心はしたものの、痛み止めを飲んでも理学療法(電気や牽引)に通っても腰痛は一向に改善せず・・・半ばあきらめかけていたといいます。

 

そんな中、娘さんがしまだのHPをご覧になり、「お母さんは、これ(筋膜性疼痛症候群)だよ、ここだよ」と確信して来室されたとのことでした。

  

 

慢性的な腰痛が改善しない、根本的な理由 

 

 

この女性のように、処方された薬を飲みながら理学療法に通っても、多くの慢性的な腰痛(に限らずですが・・・)は、なぜ改善しないのでしょうか?

 

その もっとも根本的な理由 を、ある本の中で、とてもわかりやすいたとえで説明している一節がありましたので、ご紹介します。

 

 

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** 引用:『複雑な症状を理解するための トリガーポイント大事典』より ** 

 

 

> 現在の医療には、失望させられる場面に遭遇することがあります。 

 

> 時には、無駄とさえ感じるかもしれません。

 

> 例えば、慢性的な腰痛がある人が医療に頼ろうと決心したとします。

 

> 広範囲にわたる高価な検査を受けた後、「どうやらあなたには慢性的な腰痛があるようです。しかし、40歳を過ぎれば、誰でも腰に何らかの病状があるものです。」と告げられるかもしれません。

 

> この医療従事者は、MRIなどの画像により腰部の状態を観察し、目に見える病態が症状を引き起こしていると信じ切っています。

 

> つまり、画像に映ったものを治療しようとしており、患者自身を見ようとしていません。

 

> また、画像には映らない軟部組織には目を向けられません。

 

> そのため、画像検査では正常に見えても、患者は痛みを感じています。

 

> このように、画像検査などでわかる病態が患者の症状を引き起こしているとは限りません。

 

> これは、電話の写真を見ればそれが電話だということがわかりますが、写真からはその電話が鳴っているかどうかはわからないことと同じです。

 

> 電話そのものをよく観察しなくてはならないのです。

 

 

出典:『複雑な症状を理解するための トリガーポイント大事典』

著:Devin J. Starlanyl /John Sharkey

監訳:伊藤和憲

翻訳:皆川陽一・皆川智美

緑書房 2017年

 

 

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電話の写真を見ればそれが電話だということがわかりますが、写真からはその電話が鳴っているかどうかはわからないことと同じ』ように

 

レントゲンやMRIなどの画像を見れば背骨の変化やヘルニア、脊柱管が狭窄しているということがわかりますが、画像からはその患者さんが痛みを感じているかどうかはわからない』のです。

 

ですので。

 

私たちは、患者さんの 痛みストーリー を伺いながら身体をよく観察(触診)して、画像には映らない、患者さんが痛みを感じる原因となる軟部組織(筋・筋膜)の問題 『トリガーポイント』を探し出さなくてはならないのです。

 

 

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施術後、女性は「希望がみえた」と笑顔で帰宅されました。

 

これまでに5回の施術を受けていただきましたが、「腰の痛みがとても楽になった」と施術者冥利に尽きる言葉もいただきました。

 

 

私たちが道案内を間違わなければ、多くの患者さんは希望する結果に辿り着くことができます。

 

けれど、もしも間違った道を案内してしまえば、行き止まりか、時には引き返すことのできない結果に辿り着いてしまいます。

 

 

 

腰痛と画像検査

 

 

脊椎の手術と後悔の涙

 

2025-06-14 18:00:00

「こむら返り」 について

 

◾️『こむら返り』とは

 

主に、ふくらはぎの筋肉が異常に収縮して痙攣(けいれん)を起こす状態です。

 

 

強い痛みを伴いますが、多くは数分でおさまります。

 

 

「こむら」とはふくらはぎのことですが、足の裏や指、太ももなど、体のどこの筋肉でも起こります。

 

 

◾️ 筋肉が異常に収縮する原因

 

・筋肉の制御機能の低下

筋肉には、筋肉の伸張(伸びすぎ)と収縮(縮みすぎ)を調整するセンサー(筋紡錘と腱紡錘)がありますが、縮みすぎを防ぐ腱紡錘の働きが低下すると、筋肉が異常に収縮して痙攣を起こします。

 

 

・マグネシウム不足

マグネシウムは、カルシウムやカリウムの働きを調整して、筋肉の正常な動きを保つために不可欠です。

マグネシウムが不足すると、腱紡錘の働きが低下します。

 

 

・脱水、冷え、妊娠、加齢など

発汗による水分とミネラルの喪失や血行不良が、腱紡錘の機能を低下させて痙攣を誘発します。

 

 

◾️ 起こりやすいタイミング

 

・運動中

多汗による脱水、準備運動不足、筋肉疲労など

 

 

・就寝中

就寝中はつま先が伸びてふくらはぎの筋肉が縮んだ状態にあるので、筋肉が刺激を受けると収縮しやすいため

 

 

・妊娠中

ミネラル不足になるため

 

 

・加齢

60歳以降は腱紡錘の機能が衰えるため

 

 

◾️ 予防法

 

・ミネラル補給

マグネシウム:海藻類、ナッツ類など

カルシウム:乳製品、大豆製品、小魚など

カリウム:いも類、バナナ、キウイなど

 

 

・水分補給

運動中はスポーツドリンクなどで水分とミネラルを補給しましょう。

 

就寝前にはコップ一杯の水を飲むことも有効です。

 

 

・冷え対策

靴下の着用などで保温

 

 

◾️ 注意すべき場合

 

それでも就寝中にこむら返りを繰り返す場合は、下肢静脈瘤、肝硬変、甲状腺機能低下症、腎不全、糖尿病などの病気 が隠れている可能性があるため、静脈瘤専門のクリニックや循環器内科 などの受診をお勧めします。(利尿剤や下痢による脱水も誘因になることがあります)

 

下肢静脈瘤が重症になると、こむら返りは起こりにくくなるそうです。

 

 

 

 

「こむら返り」と「骨盤の歪み」

 

 

「こむら返り」と「下肢静脈瘤」と「膝の痛み」

2025-03-15 18:00:00

お一人おひとりの 『痛みストーリー』

 

慢性的な痛みでお困りの患者さんには、お一人おひとりの『痛みストーリー』があります。

 

 

『痛みストーリー』には『患』と『トリガーポイントを見つけるためのヒント』が隠されているので、はじめての方からは『痛みストーリー』をじっくりと聴かせていただきます。

 

 

痛みの当事者は患者さんですから、どんな時に、どこにどんな痛みを感じて、どれだけ辛いのかは、患者さんにしかわかりません。

 

 

そして、患者さんには患者さんの思いや考えもあります。

 

 

『こんなに話を聞いてもらったことはなかった』とおっしゃる方もいますが、患者さんが話したいことも話せなければ、不安や不満を抱えて帰宅することになり、施術の結果にも大きく影響することになります。

 

 

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患者さんの『患(かん)』を辞書で調べると『うれえる・心配・苦しみ』と書いてあります。

 

 

そして『うれえる』には ① 悪い状態になるのではないかと心配する。②(よくない状態を)嘆き悲しむ。と書いてあります。

 

 

『患』は『心』に『串』と書きます。

 

 

私は、『心の串』=『うれえる・心配・苦しみ』 だと思っているので、心の串を取り除くことも施術だと考えています。

 

 

心の串を吐露されて時には涙を流される方もいますが、おひとりさま対応だからこそ話していただけるのだと思います。

 

 

痛みは『感覚的な痛み(からだ)』と『情動的な痛み(心)』の二面性です。

2025-03-09 21:00:00

アルバート・シュバイツァー博士の言葉

 

シュバイツァー博士は、世界的なオルガン奏者であり、宗教家であり、アフリカの奥地で未開拓の医療に献身した医師です。

 

 

『We must all die. But that I can save him from days of torture, that is what I feel as my great and ever new privilege. Pain is a more terrible load of mankind than even death itself.』

 

『人は皆、必ず死ぬ。もし激しい苦痛の日々から患者を救うことができるなら、それは私にとって素晴らしい、そして常に新たな(医師としての)生き甲斐であると感じることである。痛みは、死そのもの以上に人類にとって耐え難い暴君である。』

 

 

痛みの恐ろしさを知り尽くし、痛みに悩まされる患者を心底思いやりながら取り扱ったシュバイツァー博士ならではの言葉と思います。

 

痛みは時として「死ぬ方がよほどましだ」と思わせるほど、人のいのちに重くのしかかり、押し潰そうとします。

 

医療者は「死」からだけではなく、「痛み」からも患者さんを救うべき存在であり、また救い得る存在であり、博士はそのことに大きな誇りを感じています。

 

医療者としての誇りと痛みに対する真実の表現であるこの言葉は、医療職にある者全てが銘記すべき言葉であると思っています。

 

 

 

熊澤孝朗先生の御著書「痛みを知る」より 

2025-03-08 18:00:00

Tさんが感じた 『いつもと違う頭痛』

 

先日、Tさん(50歳代・女性)が半年ぶりに来室された。

 

Tさんは、10年ほど前から(頭痛や首肩こりなどのために)定期的に施術を受けていただいている。

 

今回は少し間が空いていたので「去年の8月から、半年ぶりですね」と声をおかけすると

 

「実は … 」と

 

去年の10月に硬膜動静脈瘻 (こうまくどうじょうみゃくろう)』に対する手術を受けていたことを話していただいた。

 

  

『硬膜動静脈瘻は、脳を保護するように包んでいる硬膜に発生する動脈と静脈の異常短絡(動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接繋がってしまう異常)を生じる比較的稀な疾患です。うっ血性静脈環流障害(静脈の流れが悪くなる状態)による脳障害や脳出血を生じます。』

ー 山梨大学医学部附属病院 脳神経外科のHPより 

 

 

Tさんからは『私の経験が何かお役に立てればうれしいです』と掲載の許可をいただいたので、Tさんが『いつもと違う頭痛』を感じた去年の8月から『硬膜動静脈瘻の診断 〜 手術 〜 現在』までをご紹介します。

 

頭痛持ちの方もそうではない方も、ぜひ参考にしてください。

 

 

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ー 2024年 8月 ー

 

Tさんが『いつもと違う頭痛』3回感じたのは、去年8月のお盆ウィーク

 

1回目『ガン・ガン・ガン』という『いつもと違う頭痛』を5分ほど感じた

 

2回目:1回目の頭痛から1〜2日後、前回同様の頭痛をより長く感じた。

 

3回目:3回目の頭痛はなかなか良くならず、1日ずっと痛かったので、かなり不安になった。

 

その後、すぐにかかりつけの頭痛外来を受診したが1回で終わっていたら、受診していなかったと思う』とおっしゃっていた。

 

頭痛外来でのMRI検査の結果、硬膜動静脈瘻を発症していることがわかり、大学病院を紹介される。

 

頭痛以外にはザ・ザ・ザ 』『血液が流れる音のような耳鳴り(右側)』を感じたそうだ。

 

硬膜動静脈瘻では、その部位、異常血管を流れる血液の量、異常血管が出ていく静脈洞の狭窄の有無などによって、症状が変わってきます。硬膜の動脈から静脈ないし静脈洞へ速い血流が流れるので、これが耳鳴りとして感じられることがあります。』

ー 慶應義塾大学病院 脳神経外科教室のHPより ー

 

 

ー 2024年 10月 ー

 

紹介先の大学病院でおこなわれた血管カテーテルの造影検査では、本来なら写ることのない静脈が写っていて、脳出血を起こしてもおかしくない状態だった。

 

そして、全身麻酔によるカテーテル(プラチナコイルを静脈に留置して閉塞させる)治療を受ける。

 

医師からは10時間かかるかもしれないと言われたが、6時間で無事終了する。

 

 

ー 術後3ヶ月の現在 ー

 

『ガン・ガン・ガン』の頭痛も『ザ・ザ・ザ』の耳鳴りもなく、カテーテルの検査でも問題なし。

 

 

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Tさんからお聞きした話では、年間300〜400人くらいの方が発症する稀な疾患で、50歳代の女性に多いとのことだった。

 

後天的だがはっきりとした原因はわからず、術後や外傷後に発症することがあるそうだ。(Tさんの発症原因もわからない)

  

そして。

 

Tさんが『いつもと違う頭痛』を感じることができたことと『リスクの高い検査と手術』を無事に終えることができたことについても、次のように話していただいた。

 

『いつもと違う頭痛を感じたのは、父の新盆だったんです。カテーテルの検査の日も、手術の日も、父の命日の24日という偶然でした』

 

『24という数字が父からのメッセージのような気がしました。父に助けられたのだと思います』

 

『これは、非科学的ですが、こういう不思議な世界もあるのかもな、と思います』

 

 

『硬膜動静脈瘻』という疾患を知らなかった私には、大変勉強になりました。

  

そして「偶然は必然」の意味が改めてよくわかりました。

 

貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

 

 

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頭痛を表現する言葉で『いつもと違う頭痛』は『重大な(命に関わる)頭痛』である可能性が高いと言われています。

 

まさにTさんも『いつもと違う頭痛』だと感じたのです。

 

痛みの程度や感じ方は、ご本人にしかわかりません。

 

たとえ1回でも『いつもと違う頭痛』を感じたら『頭痛専門外来』または『脳神経外科』を受診してください。

 

 

『硬膜動静脈瘻』について詳しく知りたい方は、以下のHPをご覧ください。

 

山梨大学医学部附属病院 脳神経外科のHP

 

慶應義塾大学病院脳神経外科教室のHP  

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