そよ風 note
筋膜における 『クリープ』
筋膜は『クリープ(ゆっくり動く)』という性質を持っています。
筋膜における『クリープ』とは
負荷のかかった状態では時間の経過とともに形を変えていく性質ですが
筋膜が正常であれば、負荷が取り除かれると元の形に戻ります。
ところが
加齢とともに毎日同じ姿勢を続けたり(デスクワークなど)
同じ動作を繰り返したり(オーバーユース)すると
筋膜がそれに順応するように時間をかけて変形して
元の形に戻りにくくなってしまいます。
このような状態になると
筋膜は厚みを増し、滑走性(滑り)が低下します。
これが『筋膜が癒着した状態(タンパク質の増殖)』であり
ここに『トリガーポイント』が形成されます。
筋膜には痛み信号を発信するするセンサー(痛みセンサー)が豊富にあるため
痛みセンサーが発痛物質を感知すると
痛み信号が脳に送られて『痛い…』と感じるのです。
慢性的な腰痛がある人は
腰痛がない人と比べて腰の筋膜(胸腰筋膜)が約25%厚くなり
筋膜の滑走性(滑り)が低下することがわかっています。
筋膜を健康にする 『ビタミンC』
筋膜を不健康にするのは糖分の多い食べ物の摂りすぎだけではなく
筋膜を健康にするために不可欠な『ビタミンC』を摂らなさすぎでもあります。
ビタミンCは、コラーゲンを形成するのに不可欠です。
ビタミンCが足りないと、コラーゲンの生産ラインは停止してしまいます。
そして。
ビタミンCは、※骨格筋 の機能維持にも不可欠です。
※骨格筋:骨に沿って付いている筋肉。
骨格筋は、体を動かしたり姿勢を保ったりする際に使われる重要な筋肉です。
通常「筋肉」と呼ぶのはこの「骨格筋」で、およそ400種類の筋肉があります。
【掲載論文】
Vitamin C Is Essential for the Maintenance of Skeletal Muscle Functions
https://www.mdpi.com/2079-7737/11/7/955
ー この論文には以下のことも書かれていました ー
・ビタミンCは、骨格筋に多く存在し、筋肉と骨をつなぐ腱の主成分であるコラーゲン線維の構築に重要な役割を担っています。
・特に、骨と筋肉をつなぐ腱にはコラーゲンが多く含まれているため、ビタミンCが不足するとコラーゲン線維がもろくなり機能しなくなるため、骨格筋の萎縮や身体機能の低下につながります。
・ヒトの骨格筋は体重の約40%を占め、骨格筋には100gあたり3~4mgのビタミンCが含まれています。
・多くの ※脊椎動物 は、ビタミンCを合成する能力を持っていますが、ヒト、非ヒト霊長類(サルの一部)、モルモット、コウモリは、ビタミンCを合成する最後の酵素に複数の変異があるため、ビタミンCを合成することができません。
※脊椎動物:犬や猫、牛や豚、ライオンやゾウ、ニワトリやアヒルなどは、ブドウ糖からビタミンCをつくることができるそうです。
・ビタミンCは骨格筋の機能維持に不可欠であり、ビタミンCの補給不足によって一旦低下した骨格筋の機能も、ビタミンCを補給することで可逆的に回復することができます。
・※血漿中 のビタミンC濃度と運動機能の関係を調べるために、日本在住の高齢女性(70~84歳)957名を対象とした解析をおこなったところ、血漿中のビタミンC濃度と運動機能には相関が認められました。
※血漿(けっしょう):血液から血球(赤血球・白血球・血小板)成分を取り除いた、血液の約半分を占めるうす黄色の液体。
その結果、血漿中のビタミンC濃度は、被験者(検査される人)の筋力(握力)、バランス能力(目を開けて片足で立つ能力)、正常歩行速度と有意な相関があることがわかりました。つまり、血漿中のビタミンC濃度が高い女性ほど、筋力や身体能力が強い傾向にありました。
・ビタミンCの必要量に性差があることは今までの研究によって示唆されていましたが、若い女性のビタミンCの摂取量を1日90mgに増やすべきであり、男性のビタミンCの摂取量は1日75mgと推奨されています。
・ビタミンCは、筋萎縮の治療法として有用であると考えられます。
・加齢に伴う筋萎縮や身体機能の低下を防ぐには、1日に十分なビタミンCの摂取が必要です。
・一般的に成人(15歳以上)の推奨量は100mg /日 と設定されています。(が、実はこれでは足りないのです…)
・妊婦さんは+10mg、授乳婦さんは+45mg、喫煙者は+35mg とされています。
実際のビタミンC推奨量は、1,000mg 〜 5,000mg /日 と言われています。
ですが、2,000mg以上摂取すると、私のように下痢(ビタミンC過剰摂取による唯一の副作用)を起こす場合があるので注意してください。
私は1,000mgのサプリを、1個 /日 飲んでいます。
筋膜を不健康にする悪者 その④『脱水』
『脱水』
運動は、筋膜に水分を送り込む最良の方法です。
そして、筋膜の健康を保つためには、たくさんの水分が必要です。
しかし、そもそも体内に十分な水分がなければ、筋膜に補給することはできません。
これまで、細胞への水分補給は血液とリンパ液を介しておこなわれると考えられていました。
ところが、フランスの形成外科医(手の外科医)である Jean - Claude Guimberteau(ジャン・クロード・ギンバルトー)医師が、生きた人間の皮膚の下に電子顕微鏡を入れたところ、筋膜はこれまで知られていなかった水分供給システムだったことがわかりました。
通常、筋膜は、ほとんどの水分を保持しています。
しかし、私たちが『隠れ脱水状態(点滴が必要になるような脱水ではありません)』にある時、まずは脳に栄養を与えるために、筋膜を含むどこからでも水分を取ろうとします。
その結果、筋膜に水分の低下が起こると毒素が蓄積し、本来洗い流されなければならない毒素のために、身体はこわばり、痛むのです。
冬は湿度も下がり、空気を乾燥させる暖房(エアコン)も欠かせないため
『隠れ脱水』にご注意ください。
参考文献「FREE YOUR FASCIA」
筋膜を不健康にする悪者 その③ 『糖質』
『糖質』
筋膜を不健康にする食べ物は、過剰に摂取した『糖質』です。
糖質は、体内でタンパク質と結合して『最終糖化産物:AGEs(Advanced Glycation End Products)』と呼ばれる老化物質になります。
AGEsは、筋膜のコラーゲンを架橋結合し(橋をかけたような形で結合する)、硬く変形させます。
そして、筋膜の場合は粘着性(ベタベタ)を増し、滑動性(自由にスライドする運動性)を低下させます。
参考文献には『老化を劇的に加速させる』とも書いてありました。
AGEsは体内で自然に生成されるものですが、筋膜を回復させるためにもっとも大切な第一歩は『砂糖の摂取量を大幅に減らすこと』です。
砂糖入りのコーヒーや糖分が含まれたジュース、ジャンクフード、ケーキやお菓子などは、できるだけ控えましょう。
私も、たまには「かりんとう饅頭」などを買ってしまいますが・・・
『毎日』甘いものを欲している人は要注意です。
怖いけど知りたい…! ジュースに含まれる砂糖の量一覧【管理栄養士執筆】
参考文献「FREE YOUR FASCIA」
筋膜を不健康にする悪者 その② 『けが』 『ストレス』 『使いすぎ』
『けが』
通常、筋膜は回復力が非常に高いので、小さなケガはあまり大きな問題にはなりません。
しかし、骨折や手術などは筋膜のトラブルにつながる可能性があります。
なぜなら、傷ついたコラーゲンは、その部位を修復しようとして、もつれたり交差したりしながら成長していくからです。
その結果、筋膜に癒着が形成され、徐々に酸欠になって痛み物質が産生され『トリガーポイント』が出来上がります。
筋膜は、フィットしたベッドシーツのようなものです。
したがって、筋膜のある部位を傷つけると、その障害を補うために他の部位を別の方法で動かしたりするようになります。
その部位だけでなく離れた部位にも痛みやしびれ、脱力感が現れることがあります。
この状態が長引けば長引くほど、それを代償するようになり、身体のあちこちに症状(痛みや運動制限)が現れるようになります。
『最初は肩こりだけだったのに、だんだんと腰や膝も痛みはじめ、いつしか腕もしびれてきた… 』
『ストレス』
ストレスは筋膜を硬くして、筋膜が硬くなるとストレスも増加します。
この悪循環に多くの人が陥っていると言われています。
患者さんと接していると、ストレスが筋膜に及ぼす影響がはっきりわかる部位があります。
それは『 顔 』『 首 』『 顎(頬)』『 お腹 』です。
これらは姿勢にも現れ、組織の硬さ、抵抗、制限という形で感じることができます。
『使いすぎ』
筋膜の潤いと健康を保つには、動くことがとても大切です。
しかし、同じ動作をなんども繰り返すこと(使いすぎ)は、筋膜のトラブルにつながる可能性があります。
使いすぎは動くことだけではなく、動かない(長い時間同じ姿勢でいる)ことも同じ意味になります。
参考文献「FREE YOUR FASCIA」