そよ風 note
腰痛と腹筋 その④ 『運動療法で腰痛を改善する』という考え方が問題である理由
これまでにも、この考え方にはさまざまな問題がありましたが、より大きな問題があります。
それは、腰痛の起因に対する理解が劇的に変化し(腰痛概念のパラダイムシフトが起こり)、『心理・社会的な要因が、急性腰痛の発症から慢性化に移行する重要な(危険および予後)因子になった』からです。
腰痛には、心理・社会的な要因が関わっていることが明らかである以上、脊椎の安定性や筋力の弱さなどの力学的な要因に焦点を当てることが、腰痛の改善にどれほどの役割を果たすかは想像に難しくありません。
一部の人は運動療法で腰痛を改善できるかもしれませんが、複雑な『生物・心理・社会的な因子』を持つ可能性がある多くの患者さんに対して『体幹を鍛えれば腰痛は改善できます』といった短絡的な解決策を提供することは、治療の焦点を大きくずらすことになります。
患者さんの症状の根底にある本当の問題が無視され、患者さんは症状の原因を知ることはありません。
このような状況は、腰痛の慢性化をより促進するのです。
運動療法は、患者さんの意識を腰(痛)に向けやすくなり『自分の腰はひどい状態なんだ(だから鍛えなければいけない)』という思いを強化します。
私たち(医療を提供する側)は、患者さんに、体幹の筋肉を鍛えるのではなく弛緩させるように促すべきであり、患者さんの意識を『腰から遠ざける』べきなのです。
まとめ
・腹筋の弱さ、体幹筋群間のアンバランスは、病的なものではなく、正常な変化に過ぎません。
・腹筋が弱くても、腰痛になることはありません。
・体幹の筋肉を緊張させても、腰痛を防いだり、腰痛の再発を抑えたりする効果は期待できません。
・コア・スタビリティ・エクササイズは、他のどのような運動よりも効果的ではなく、怪我を防ぐこともできません。
・コア・スタビリティ・エクササイズは、慢性的な腰痛を軽減する上で、他の運動よりも優れているとは言えません。治療的な影響は、体幹の安定性よりも運動効果に関連するものです。
最後にお伝えしたいこと
運動は良いことですが『コア(体幹)を鍛える』ことを、あえて選ぶ必要はありません。
腹筋の過度な緊張は、ぎっくり腰や慢性腰痛の原因になります。(これでは本末転倒です)
腰痛でお困りの方は、腹部にもトリガーポイントが潜んでいることが多く、私の施術室に来られている患者さんは、身をもって体験しています。
腰が痛い時、多くの人はこのイラストのような姿勢になります。
この時、全身の中で一番強い収縮を起こしている(身体が大きく曲がっている)のは ⭕️ (腹部)です。
このような姿勢は、腰が痛いから前屈みになっているのではなく、⭕️ (腹筋をはじめとする体幹の屈筋群)が強い収縮を起こしているから前屈みになってしまう(真っ直ぐに起き上がれない)のです。
以下のような方は、腹部にトリガーポイントが潜んでいる可能性が高いです。
・朝、起き上がる時に腰が痛い(左右どちらかを向いて、手をつきながら起き上がる)
・ベッドから降りても、すぐに真っ直ぐに立てない(少し時間が経つと立てるようになる)
・顔を洗う中腰姿勢がきつい
・ズボンを履き替える時に腰が痛い(脚が挙がりにくい)
・デスクワークや車の運転などでしばらく座った後、立ち上がりや歩き出す時に腰が痛い(しばらく前屈みになってしまう)
※ 近年、健康向上に良い効果をもたらすのは、日常的な軽い筋運動であって、スポーツジムなどでおこなう強い筋運動ではないことが明らかになりました。← スーパーヘルシーの秘薬 『PGC1−α』
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