そよ風 note
テニスをしないNさんの「テニス肘」
先日から、右肘の痛みを訴える40代の男性・Nさんが来室されている。
右肘の痛みは昨年の11月頃から徐々に強まり、今年に入ってさらに悪化したそうだ。
ある日、右肘の痛みのためにペットボトルの蓋を開けられなくなったNさんは整形外科を受診し「テニス肘」と診断された。
処方されたのは「痛み止め(抗炎症薬)と湿布」。
しかし、毎日痛み止めを服用し、湿布を貼り続けても症状の改善は見られなかった。
そこで、次に訪れた整骨院でも「テニス肘」と言われ、電気(ビリビリ)と超音波を5回ほど受けたが、効果を感じられなかった。
そのうえ、筋力がないからということで筋力訓練の方法も教えてくれたが、痛くてそれどころではなかったそうだ。
不安を感じたNさんは「まだ痛いのですが……」と先生に相談すると「これは時間がかかります。半年から1年はかかるかもしれません」と告げられ、愕然としたという。
他に治療法はないかとインターネットで調べたところ、私の施術を見つけたそうだ。
◾️テニス肘とは
テニス肘は、医学的には「上腕骨外側上果炎」と呼ばれている。
「テニス肘」という名称は 1880年代(140年以上前)から使われており、テニスをする人にも、しない人にも起こる症状だ。
医学的には「使いすぎによって上腕骨の外側上果が炎症を起こす」とされている。
理論的には「使いすぎ」が原因なら、しばらく安静にすれば治るはずだが、現実にはそう簡単に改善しない。
また、炎症があるなら抗炎症薬が効くはずだが、Nさんのように痛み止めを飲んでも改善しないケースがほとんどだ。
このようなことから、テニス肘は「難治性(なかなか治らない痛み)」とされている。
しかし、難治性の原因は「使いすぎ・炎症説」が140年以上も語り継がれ、治療法がそれに基づいている からだ。
◾️Nさんの「テニス肘」の背景
テニス肘の痛みを確認するためのテストがある。
テストの説明をしたところ、Nさんが「それ、痛いんです、整形外科でも整骨院でもやりました…」と話してくれたので中止した。
Nさんの「痛みストーリー」を聴くと、そこにはトリガーポイントのヒントが多く隠されていた。
Nさんのテニス肘も、痛みストーリーの結果(『キートリガーポイント』 ⇨ 『サテライトトリガーポイント』)と判断してトリガーポイントを探索したところ、右肘(腕)意外にも多数のトリガーポイントが存在していた。
テニス肘の症状を現しているのは、サテライトトリガーポイントだ。
Nさんはテニスをせず、右腕だけを酷使するような生活も送っていないが、これまでに以下のような 症状とストレス を抱えていた。
・定期的な頭痛(脳神経外科を受診するも異常なし。頭痛薬を常備)
・慢性的な首肩の凝り(2週間前にも寝違え)
・時々、腰(臀部)や脚が痛い
・職場での人間関係
トリガーポイントと思われる部位を触診すると、Nさんは体が飛び上がるほどの強い痛みを感じたようだ。
また「立ったまま天井を見てください」とお願いすると、頭を十分に後へ倒せず、天井を見ることができなかった。
◾️施術の経過
これまでに週2回の施術を3週間継続したところ、右肘の痛みは軽減(痛みレベル10 → 3 または 2 )した。
さらには、頭痛薬を飲まなくなったと喜んでいただいた。
触診すると、まだ「そこそこ痛い」箇所はあるものの、痛みの悪循環 からは確実に抜けつつある。
◾️「使いすぎ・炎症説」は本当に正しいのか?
テニス肘の原因として、140年以上語られてきた「使いすぎ・炎症説」は本当に正しいのだろうか?
少なくともNさんのケースでは、使いすぎが原因と言えず、炎症があったとも考えにくい。
しかし、医療を提供する側にとっては、この説を前提とした治療が 都合がいい 。
なぜなら「使いすぎが原因だから安静に」「炎症があるから痛み止めと湿布を」と説明したほうが、今の医療システムにとっても好都合だからだ。
これはテニス肘に限らず、多くの 慢性痛治療が同じ構造 になっている。