そよ風 note
FBSS
Failed Back Surgery Syndrome :FBSS
『脊椎手術後失敗症候群』
・腰椎の手術を受けたにもかかわらず、腰痛や下肢痛などの症状が持続する患者を指す言葉で、新たな症状が増し加わることもある。
・腰椎手術後の 5~50% に FBSS が発生すると言われている。
・FBSS の治療には、複数回の手術が行われることが多い。
・腰椎手術は、脊椎に不可逆的な(手術する前の状態には戻れない)変化を与えるために、一度手術が行われてしまうとその影響は持続する。
・2回目の手術では40~50%が改善し、20%は悪化する。
・3回目の手術では20~30%に有効であるが、25%は悪化する。
・4回目の手術では改善するのは10~20%にとどまり、45%が悪化する。
時間つぶし
施術室しまだには、整骨院や整形外科医院(理学療法室)などにある牽引装置や電気などはありません。
ですが、私が25年前に整骨院を開業した時は、多くの機器を揃えました。
この写真は、開業して1年くらい経った時(2000年12月)の島田整骨院です。
私が、整骨院を開業した時に多くの機器を揃えた理由は『電気をあてて時間をつぶす + 保険請求のため』でしたが、4年後には、物理療法の機器はすべて処分しました。
それらの引き取りを医療機器製造販売会社にお願いした時、担当者が私に言った言葉です。
『 これから時間つぶしどうするんですか? 』
社員ですら、自社の機器を『時間つぶし』と思っているのです。
島田整骨院にあった機器が、本当に痛みで困っている患者さんのためになるのなら、今でもここにもあるはずです。
骨盤牽引と同じく、治療手段として真に有効であると思っている人はあまりいないのではないでしょうか。
牽引療法には効果がない?
『腰痛のナゼとナゾ』 菊池臣一著 より
牽引療法とは脊椎を上下にひっぱり、腰椎の圧迫を軽くして腰痛を軽減する目的で行われるもので、牽引することで腰部の安静や異常な筋肉緊張の軽減、椎間板内圧の減少などが得られると考えられてきました。
現在も、整形外科医院や接骨院などで、脊椎の病気に対する局所の安静などを目的に、日常的な診療プログラムのなかに牽引療法を組み込んでいるところが多くみられます。
私も以前は入院患者さんに、治療を受けているという意識を持ってもらうために使用していたことがありました。
しかし、外来にこられる患者さんには使用していません。
その理由は、15〜20分ほどの牽引療法を受けるために、往復1時間以上もかけて通院するなら、その時間を腰痛の軽減に効果があるとされる日常的な仕事や家事、あるいは運動にあてたほうがよいのではないかと考えたからです。
しかし、これだけ普及しているにもかかわらず、牽引療法が腰痛や坐骨神経痛に有効であるという科学的な根拠は報告されていません。
逆に、イギリスの腰痛ガイドラインでは「牽引療法に関しては、治療効果がないことが証明されている」と明言しています。
さらに、牽引療法を行いながら安静に寝ていると、関節のこわばり、筋肉の萎縮、骨密度の低下などの危険があるので、腰痛の患者さんには用いるべきではないと言及しています。
単純に考えても、腰の椎間板の変性によって低くなった身長を元の状態に戻そうとしたり、腰椎の彎曲したカーブの度合いを改善したりするためには相当な力が必要になるでしょう。
牽引によりかえって腰痛を悪化させる可能性も否定できません。
患者さん本人が牽引後に気持ちよく感じられるのであればよろしいのですが、効果が認められないと実感されたときは、漫然と続けていないで他の療法に切り替えたほうがよいでしょう。
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腰痛の治療に関与している専門家で、骨盤牽引が治療手段として真に有効であると思っている人は、あまりいないのではないでしょうか。
『続・腰痛をめぐる常識のウソ』 菊池臣一著 より
本物の神経障害
本物の神経障害は、日内変動がなく、神経の機能低下(運動神経なら麻痺、感覚神経なら感覚低下)による症状は、完全に持続性です。
麻痺とは、神経が何らかの原因で正常に機能していない状態です。
自分の思うように手足などを動かすことができず、触れても針で突いても知覚が鈍いか感覚がない状態です。
熱い冷たいの感覚も、痛みもしびれもありません。
そして、症状の強さは常に同じで、強弱がなく、波もなく、緩解(軽減または消失する)することはありません。
それに対して、症状の強さが常に同じではなく、強弱があり、波もあり、緩解(軽減または消失する)ことがある『いわゆる坐骨神経痛』は、本物の神経障害ではありません。
その① 腰痛
腰痛の原因は椎間板ヘルニアであると、ふつう信じられている。
椎間円板は椎骨の間から突出して、感覚線維を含む脊髄後根を圧迫すると信じられている。
椎間板ヘルニアの頻度は、痛みをもつ人たちともたない人たちで同じである。
椎間板ヘルニアがあって痛みをもつ人々が、外科手術以外の方法で治療されると椎間円板の突出した部分は消えたり、消えなかったりする。
しかしこれは、まだ痛いか、それとも痛くないかに関係しない。
椎間円板の役割についての外科医の混乱は、突出した椎間板を取り除く手術の割合が、国によって大きく異なることに反映されている。
10年前に、10万人当たり、英国で100人、スウェーデンで200人、フィンランドで350人、米国で900人であった。
この割合は現在下がり続けていて、神話がばらまかれて、少数の人の利益になるが多くの人の不利益になるような不名誉な時代は終わった。
不利益を受けたある人たちは、手術の結果、明らかにいっそう悪くなった。
代替医療の開業者たちは、椎骨の配列異常、神経の拘扼、関節障害など、他の多数の原因を挙げているが、今のところ、これらの原因を納得できる形で示したものはない。
原因の1つに損傷を加えるのは自然であろうが、腰痛患者の大多数に損傷の証拠はない。
航空機製造会社ボーイングのような会社の大掛かりな調査で、腰痛を訴える人の割合は、事務職労働者と重い物を持ち上げる工場労働者で同じであることが繰り返し示された。
したがって、激しい、あるいは並外れた運動が腰痛をきたすという証拠はない。
ある筋肉はいつも収縮状態にあって、脊椎をふつうと異なる形に傾けている。
自由な随意運動はなく、硬結(しこり、stiffness)を触れることができる。
痛みを生じる運動を妨げるため、背中を副子で固定したような状態を作り出そうとして筋肉が収縮していれば、筋収縮は痛みに続発したものかもしれない。
疼痛学序説 腰痛より