そよ風 note
坐骨神経痛とトリガーポイント その①
先日、右脚の付け根とひざの痛みを訴える女性が青梅市から来られた。
痛みの始まりは去年の1月
ある日突然、右脚の付け根が痛くなり歩けなくなってしまったそうだ。
自宅近くの整形外科を受診すると、レントゲンとMRIの結果から
『変形性脊椎症』
『腰椎滑り症』
『脊柱管狭窄症』
などの影響(圧迫)による『坐骨神経痛』
と言われたそうだ。
あれから1年半、処方された薬を毎日欠かさず飲みながら、物理療法にも週に3回通っているが
足をひきずらないと歩けなくなり
階段は上れなくなる
布団に寝る時平らに寝られなく
椅子に寝ている状態
とのこと(問診票そのまま)だった。
ー 処方された薬 ー
・タ◯ージェ(神経障害性疼痛の薬)
・セレ◯キシブ(非ステロイド抗炎症薬)
・ファモチジン(胃酸の分泌を抑える薬)
ー 物理療法の内容 ー
・牽引
・ウォーターベッド
・膝への超音波
月に一度の診察では
「まだ痛いですか?」と顔も見ずに聞かれ
「まだ痛いです」と答えると
薬の量(mg)が増えても痛みが軽減することはなく
今年に入ってからは、同じ質問に対して同じように答えると
「もっときつい薬を出しましょうか?」
「最終的には手術しかありませんので」
と言われるようになったそうだ。
まずは『変形性脊椎症』『腰椎滑り症』『脊柱管狭窄症』などは無害の結果であること
『いわゆる坐骨神経痛』は本物の神経痛ではないことをたくさんの資料を使って説明する。
そして、トリガーポイントを探しながら、膝や股関節の可動域(動き)を調べていると、身体のあちこちがそんなに痛いことも股関節がこんなに動かないことも知らなかった、とのことだった。
すべてのトリガーポイントに対して、じっくり・じんわり マイオスライドリリース をおこなって初回を終了する。
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筋膜における 『クリープ』
筋膜は『クリープ(ゆっくり動く)』という性質を持っています。
筋膜における『クリープ』とは、負荷のかかった状態では時間の経過とともに形を変えていく性質ですが、筋膜が正常であれば、負荷が取り除かれると元の形に戻ります。
ところが、加齢とともに毎日同じ姿勢を続けたり(デスクワークなど)、同じ動作を繰り返したり(オーバーユース)すると筋膜がそれに順応するように時間をかけて変形して、元の形に戻りにくくなってしまいます。
このような状態になると、筋膜は厚みを増し、滑走性(滑り)が低下します。
これが『筋膜が癒着した状態(タンパク質の増殖)』であり、ここに『トリガーポイント』が形成されます。
筋膜には痛み信号を発信するするセンサー(痛みセンサー)が豊富にあるため、痛みセンサーが発痛物質を感知すると、痛み信号が脳に送られて『痛い…』と感じるのです。
慢性的な腰痛がある人は、腰痛がない人と比べて腰の筋膜(胸腰筋膜)が約25%厚くなり、筋膜の滑走性(滑り)が低下することがわかっています。
その① 腰痛
腰痛の原因は椎間板ヘルニアであると、ふつう信じられている。
椎間円板は椎骨の間から突出して、感覚線維を含む脊髄後根を圧迫すると信じられている。
椎間板ヘルニアの頻度は、痛みをもつ人たちともたない人たちで同じである。
椎間板ヘルニアがあって痛みをもつ人々が、外科手術以外の方法で治療されると椎間円板の突出した部分は消えたり、消えなかったりする。
しかしこれは、まだ痛いか、それとも痛くないかに関係しない。
椎間円板の役割についての外科医の混乱は、突出した椎間板を取り除く手術の割合が、国によって大きく異なることに反映されている。
10年前に、10万人当たり、英国で100人、スウェーデンで200人、フィンランドで350人、米国で900人であった。
この割合は現在下がり続けていて、神話がばらまかれて、少数の人の利益になるが多くの人の不利益になるような不名誉な時代は終わった。
不利益を受けたある人たちは、手術の結果、明らかにいっそう悪くなった。
代替医療の開業者たちは、椎骨の配列異常、神経の拘扼、関節障害など、他の多数の原因を挙げているが、今のところ、これらの原因を納得できる形で示したものはない。
原因の1つに損傷を加えるのは自然であろうが、腰痛患者の大多数に損傷の証拠はない。
航空機製造会社ボーイングのような会社の大掛かりな調査で、腰痛を訴える人の割合は、事務職労働者と重い物を持ち上げる工場労働者で同じであることが繰り返し示された。
したがって、激しい、あるいは並外れた運動が腰痛をきたすという証拠はない。
ある筋肉はいつも収縮状態にあって、脊椎をふつうと異なる形に傾けている。
自由な随意運動はなく、硬結(しこり、stiffness)を触れることができる。
痛みを生じる運動を妨げるため、背中を副子で固定したような状態を作り出そうとして筋肉が収縮していれば、筋収縮は痛みに続発したものかもしれない。
疼痛学序説 腰痛より
25年前の本に書いてあること
この本は1999年にイギリスで出版された
『PAIN The Science of Suffering(痛み:苦痛の科学)』の日本語版
『疼痛学序説 ー痛みの意味を考えるー』(南江堂 2001年)です。
この本も大阪のセミナーに向かう新幹線の中で読んでいたので、20年ほど前に購入したと思います。
著者のPatrick D. Wall(パトリック・ウォール) は、偉大な神経科学者であり、20世紀最大の疼痛学者の1人である。とこの本でも紹介されています。
パトリック・ウォール(1925 – 2001)は、痛みを科学する人、痛みの専門家です。
痛み治療に携わる人で、知らない人はいないでしょう。
25年前に出版されたこの本には、椎間板ヘルニアもヘルニアに対する手術もすでに疑問視されていることが書かれています。
筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome)の説明もあります。
その③ 筋筋膜性疼痛症候群
筋筋膜性疼痛症候群(myofascial pain syndrome)の痛みは1つの領域に限局している。
圧迫が痛みを生じる圧痛点(トリガー点)がある。
このときの痛みは、遠隔部に拡がり、患者が訴えていた痛みに似ている。
トリガー点の下に、ピーンと張った筋肉の帯を触れる。
この帯にある筋肉を伸展したり、この帯に局所麻酔を注入したり、針を刺したりすると、痛みは緩和する。
患者はトリガー点やピーンと張った帯のある筋肉を動かせないかもしれない。
あるいは、その筋肉を動かせば痛みが誘発される。
痛みが6ヶ月あるいはそれ以上続くと、予後がだんだん悪くなる。
圧痛点の局所治療は一時的緩和を生じるが、圧痛は戻ってくる。
多くの医師たちは、局所の原因がない局所性の痛みはありえないと思い込んでいる。
したがって、局所性の原因を証明できないので病気は存在しないと結論する。
疼痛学序説 筋筋膜性疼痛症候群より