そよ風 note
Focal Vibration Therapy がもたらす効果
FVTは、痛みを和らげるための穏やかで先進的なアプローチです。
特にトリガーポイント(筋膜性の痛み)や筋肉の緊張(張り感)に対して非常に有効です。
高周波振動(4710 〜 8310rpm / 79 〜 139Hz)を発生させる専用の機器を使って、4つの周波数と7つの振動パターンを調整しながら、トリガーポイントを(20秒 〜 数分間)集中的に刺激します。
トリガーポイントの直径は 1cmほど ですが、筋膜が癒着して肥厚している範囲は個人差があります。そのため、ターゲットに合わせて適切なアタッチメントを選択し、より効果的な施術をおこないます。
◾️振動療法の効果
FVTをはじめとする 振動療法 には、痛みを和らげる効果に加えて、筋肉を収縮させる効果 と 筋肉の緊張を緩和させる効果 があります。
・ 20〜50Hzの低周波振動 ⇨ 筋肉を収縮させる効果
・ 50Hz以上の高周波振動 ⇨ 筋肉の緊張を緩和させる効果
振動療法では50Hzを境界線とし、それ以下を「低周波」、それ以上を「高周波」と分類しています。
低周波(20〜50Hz)の振動 は、脳卒中や脳梗塞による麻痺(腕や脚など)のリハビリに使用され、筋肉の収縮を促します。
一方、50Hz以上の高周波の振動 は、痛みの軽減や筋肉の緊張緩和を目的として使用されます。
FVTでは、この周波数帯の振動をより効果的に活用し、症状の改善を目指します。
◾️FVT がもたらす効果
高周波振動でトリガーポイントを集中的に刺激することで、以下の効果が期待できます。
1.痛みの緩和(痛みセンサーの感作から脱感作へ)
感作とは:痛みの刺激に対して過敏な状態になることを指し、これが慢性的な痛みの原因となります。
FVTでは、振動によって痛みセンサーを刺激し、脳への痛み信号を遮断する「ゲートコントロール理論」に基づいたメカニズムが働きます。これにより、痛みの感覚が和らぎます。
2.筋肉の緊張緩和
筋紡錘や腱紡錘(筋肉や腱にあるセンサー)を刺激することで、筋肉の緊張を緩和し、柔軟性を高めます。
3.血行促進と酸素供給の向上
振動による血管拡張作用によって血液循環が改善され、酸素や栄養素の供給がスムーズになります。これにより組織の回復が促されます。
4.自然な鎮痛作用(エンドルフィンの放出)
振動刺激により、脳内で「エンドルフィン」と呼ばれる自然の鎮痛物質が分泌され、痛みが軽減されます。
5.副交感神経の活性化とリラックス効果
心地よい高周波振動が、自律神経のバランスを整え、副交感神経を優位にします。その結果、以下のようなリラックス反応がみられることがあります。
・眠くなる
・呼吸が深くなる
・胃腸の動きが活発になる(お腹がなる・排泄が促される)
・鼻水が出る
6.睡眠の質の向上
痛みやストレスが軽減されることで、深い睡眠を得やすくなり、心と身体の回復をサポートします。
FVTは、痛みの緩和だけでなく、心身のリラックスや健康維持にも役立つ施術法です。
Focal Vibration Therapy について
振動療法は100年前から研究されており、近年ではその効果がより明らかになっています。
特に『Focal Vibration Therapy(フォーカルバイブレーションセラピー)』と呼ばれる 特定の部位に焦点をあてた振動療法 の潜在的な効果が強く支持されています。
FVTは「Direct Vibration Therapy」や「Focused Vibration Therapy」と呼ばれることがあります。
私はこれまでに、さまざまな振動機器を使用してきました。
例えば、ヒットマッサー、ゼロプロマッサー、スパイナルアジャスター、スパイナルVFアジャスターなどです。
そして、ここ15年ほどはパーカッションハンマーを使用しています。
そんな中、改めて振動療法に関する文献を読み進めるうちに『Focal Vibration Therapy(以下FVT)』の存在を知りました。
調べてみると、海外ではFVT専用の機器が開発・販売されており、昨年10月に私も導入しました。
その結果、FVT を受けた患者さんからは「痛みの緩和」や「症状の改善」に対する高い評価をいただき、FVTの心地よさも好評でした。
さらに、私自身も右膝の痛みが解消され、その効果を実感しています。
試しに Chat GPT に『Focal Vibration Therapy とは?』と尋ねたところ、『フォーカルバイブレーションセラピー(FVT)は、特定のターゲットに高周波振動を与えることで、筋骨格系の症状を緩和する新しい治療法ですね』との回答が得られました。
FVTは、今後さらに注目される振動療法の一つであり、私自身もその可能性を追求しながら、より効果的な施術を提供していきたいと考えています。
施術を受ける頻度と期間
施術の効果を十分に引き出すためには、ある程度の回数と時間をかけることが大切です。
◾️ 慢性的な症状がある方
・週2回のペースで1〜2ヶ月間
・週1回のペースで2〜4ヶ月間
⇨ 症状の重症度や生活習慣によって、適した頻度は異なります。
◾️ 比較的軽い症状の方
・症状が出ている期間が短い場合
・トリガーポイントの数が少ない場合
⇨ 数回〜5回程度の施術で改善することが多いです。
◾️ 長期間(数ヶ月〜数年)続いている症状の方
・トリガーポイントが数が多い、広範囲に及んでいる場合
・組織の癒着が強く、症状が複雑な場合
⇨ 数ヶ月にわたる継続的な施術が必要になることもあります。
症状の改善や回復のスピードには個人差があります。
お一人おひとりの 『痛みストーリー』
慢性的な痛みでお困りの患者さんには、お一人おひとりの『痛みストーリー』があります。
『痛みストーリー』には『患』と『トリガーポイントを見つけるためのヒント』が隠されているので、はじめての方からは『痛みストーリー』をじっくりと聴かせていただきます。
痛みの当事者は患者さんですから、どんな時に、どこにどんな痛みを感じて、どれだけ辛いのかは、患者さんにしかわかりません。
そして、患者さんには患者さんの思いや考えもあります。
『こんなに話を聞いてもらったことはなかった』とおっしゃる方もいますが、患者さんが話したいことも話せなければ、不安や不満を抱えて帰宅することになり、施術の結果にも大きく影響することになります。
患者さんの『患(かん)』を辞書で調べると『うれえる・心配・苦しみ』と書いてあります。
そして『うれえる』は
① 悪い状態になるのではないかと心配する
②(よくない状態を)嘆き悲しむ
とあります。
『患』は『心』に『串』と書きます。
私は、『心の串』=『うれえる・心配・苦しみ』 だと思っているので、心の串を取り除くことも施術だと考えています。
心の串を吐露されて時には涙を流される方もいますが、おひとりさま対応だからこそ話していただけるのだと思います。
痛みは『感覚的な痛み(からだ)』と『情動的な痛み(心)』の二面性です。
アルバート・シュバイツァー博士の言葉
シュバイツァー博士は、世界的なオルガン奏者であり、宗教家であり、アフリカの奥地で未開拓の医療に献身した医師です。
『We must all die. But that I can save him from days of torture, that is what I feel as my great and ever new privilege. Pain is a more terrible load of mankind than even death itself.』
『人は皆、必ず死ぬ。もし激しい苦痛の日々から患者を救うことができるなら、それは私にとって素晴らしい、そして常に新たな(医師としての)生き甲斐であると感じることである。痛みは、死そのもの以上に人類にとって耐え難い暴君である。』
痛みの恐ろしさを知り尽くし、痛みに悩まされる患者を心底思いやりながら取り扱ったシュバイツァー博士ならではの言葉と思います。
痛みは時として「死ぬ方がよほどましだ」と思わせるほど、人のいのちに重くのしかかり、押し潰そうとします。
医療者は「死」からだけではなく、「痛み」からも患者さんを救うべき存在であり、また救い得る存在であり、博士はそのことに大きな誇りを感じています。
医療者としての誇りと痛みに対する真実の表現であるこの言葉は、医療職にある者全てが銘記すべき言葉であると思っています。
熊澤孝朗先生の御著書「痛みを知る」より


