そよ風 note

2025-03-25 20:00:00

テニスをしないNさんの「テニス肘」

先日から、右肘の痛みを訴える40代の男性・Nさんが来室されている。

右肘の痛みは昨年の11月頃から徐々に強まり、今年に入ってさらに悪化したそうだ。

ある日、右肘の痛みのためにペットボトルの蓋を開けられなくなったNさんは整形外科を受診し「テニス肘」と診断された。

処方されたのは「痛み止め(抗炎症薬)と湿布」。

しかし、毎日痛み止めを服用し、湿布を貼り続けても症状の改善は見られなかった。

そこで、次に訪れた整骨院でも「テニス肘」と言われ、電気(ビリビリ)と超音波を5回ほど受けたが、効果を感じられなかった。

そのうえ、筋力がないからということで筋力訓練の方法も教えてくれたが、痛くてそれどころではなかったそうだ。

不安を感じたNさんは「まだ痛いのですが……」と先生に相談すると「これは時間がかかります。半年から1年はかかるかもしれません」と告げられ、愕然としたという。

他に治療法はないかとインターネットで調べたところ、私の施術を見つけたそうだ。

 

◾️テニス肘とは

テニス肘は、医学的には「上腕骨外側上果炎」と呼ばれている。

「テニス肘」という名称は 1880年代(140年以上前)から使われており、テニスをする人にも、しない人にも起こる症状だ。

医学的には「使いすぎによって上腕骨の外側上果が炎症を起こす」とされている。

理論的には「使いすぎ」が原因なら、しばらく安静にすれば治るはずだが、現実にはそう簡単に改善しない。

また、炎症があるなら抗炎症薬が効くはずだが、Nさんのように痛み止めを飲んでも改善しないケースがほとんどだ。

このようなことから、テニス肘は「難治性(なかなか治らない痛み)」とされている。

しかし、難治性の原因は「使いすぎ・炎症説」が140年以上も語り継がれ、治療法がそれに基づいている からだ。

 

◾️Nさんの「テニス肘」の背景

テニス肘の痛みを確認するためのテストがある。

テストの説明をしたところ、Nさんが「それ、痛いんです、整形外科でも整骨院でもやりました…」と話してくれたので中止した。

Nさんの「痛みストーリー」を聴くと、そこにはトリガーポイントのヒントが多く隠されていた。

Nさんのテニス肘も、痛みストーリーの結果『キートリガーポイント』 ⇨ 『サテライトトリガーポイント』と判断してトリガーポイントを探索したところ、右肘(腕)意外にも多数のトリガーポイントが存在していた。

テニス肘の症状を現しているのは、サテライトトリガーポイントだ。

Nさんはテニスをせず、右腕だけを酷使するような生活も送っていないが、これまでに以下のような 症状とストレス を抱えていた。

・定期的な頭痛(脳神経外科を受診するも異常なし。頭痛薬を常備)

・慢性的な首肩の凝り(2週間前にも寝違え)

・時々、腰(臀部)や脚が痛い 

職場での人間関係

トリガーポイントと思われる部位を触診すると、Nさんは体が飛び上がるほどの強い痛みを感じたようだ。

また「立ったまま天井を見てください」とお願いすると、頭を十分に後へ倒せず、天井を見ることができなかった。

  

◾️施術の経過

これまでに週2回の施術を3週間継続したところ、右肘の痛みは軽減(痛みレベル10 → 3 または 2 )した。

さらには、頭痛薬を飲まなくなったと喜んでいただいた。

触診すると、まだ「そこそこ痛い」箇所はあるものの、痛みの悪循環からは確実に抜けつつある

 

◾️「使いすぎ・炎症説」は本当に正しいのか?

テニス肘の原因として、140年以上語られてきた「使いすぎ・炎症説」は本当に正しいのだろうか?

少なくともNさんのケースでは、使いすぎが原因と言えず、炎症があったとも考えにくい。

しかし、医療を提供する側にとっては、この説を前提とした治療が 都合がいい 

なぜなら「使いすぎが原因だから安静に」「炎症があるから痛み止めと湿布を」と説明したほうが、今の医療システムにとっても好都合だからだ。

これはテニス肘に限らず、多くの 慢性痛治療が同じ構造 になっている。

2025-03-20 18:00:00

Focal Vibration Therapy が効果をもたらす要素

Focal Vibration Therapy (FVT) の効果を決定する要素は、以下の3つです。

①『周波数』 

②『振幅』

③『振動パターン』

  

①『周波数』1秒間に振動する回数

痛みの軽減と筋肉の緊張緩和には 高い周波数 が必要です。

 一般的なマッサージガンとFVT機器の「周波数」には大きな違いがあります。

周波数の単位は「Hz(1秒間に振動する回数)」ですが、マッサージガンは「rpm(1分間に繰り返される回転)」で表記されていることが多いです。

一般的なマッサージガンは 1,500 〜 3,500rpm(25 〜 58HZ)ですが、FVTで使用する機器は 4710 〜 8310rpm(79 〜 139Hz)です。

施術では、目的に応じて 4つの周波数(79Hz・95Hz・124Hz・139Hz)を使い分け、より効果的に痛みを和らげます。

 

②『振幅』振動の大きさ

振幅とは、マッサージガンのアタッチメントが 上下に動く距離 のことです。

一般的なマッサージガンの振幅は、小さいもので約4mm、大きいものでは16mmほどあります。

しかし、振動療法で痛みを緩和させるためには、振幅は『0』であることが重要です。

なぜなら、振幅が大きくなるほど 振動の大きさ(叩く力)も増すためです。

痛みを抱える患者さんは、トリガーポイントが過敏化し、交感神経も緊張しています。

そのような状態に振幅の大きい(強い)振動を加えると、トリガーポイントはさらに過敏化し、交感神経の興奮も強まってしまいます。

実際に、マッサージガンを痛い部分に当てたことで、かえって痛みが強くなった という方も少なくありません。(しまだには3人ほど来室されました)

 

③『振動パターン』振動の強弱や間隔の変化

スマートフォンのバイブレーションに「連続振動」や「リズミカルな振動」があるように、振動にはさまざまなパターンがあります。

FVTでは、強弱や間隔の変化を加えた振動パターンを採用しています。

これは受容器の反応を持続させるためです。

筋膜にある多くの受容器は同じ刺激に慣れてしまう(順応する)ので、振動パターンを変えることで、受容器を持続的に刺激することができます。

 

7種類の振動モードと4段階の強度

IMG_4326.jpeg 

73152050-C6F4-41F4-A5D2-D03E0CAE828A.jpeg

https://youtube.com/shorts/QLu7HuJQ14s?feature=share  

cymatics:サイマティクスの現象

水や砂に振動を加えることで、美しい波紋や模様が目に見える形として現れる現象です。

これは、振動が物質に秩序ある動きを与えることを示しています。

ですが、マッサージガンによる振動では(振幅があるために)、このような波紋や模様が現れることはなく、秩序ある動きを与えることはできません。

2025-03-20 18:00:00

Focal Vibration Therapy がもたらす効果

FVTは、痛みを和らげるための穏やかで先進的なアプローチです。

特にトリガーポイント(筋膜性の痛み)や筋肉の緊張(張り感)に対して非常に有効です。

高周波振動(4710 〜 8310rpm / 79 〜 139Hz)を発生させる専用の機器を使って、4つの周波数と7つの振動パターンを調整しながら、トリガーポイントを(20秒 〜 数分間)集中的に刺激します。

トリガーポイントの直径は 1cmほど ですが、筋膜が癒着して肥厚している範囲は個人差があります。そのため、ターゲットに合わせて適切なアタッチメントを選択し、より効果的な施術をおこないます。

 

◾️振動療法の効果

FVTをはじめとする 振動療法 には、痛みを和らげる効果に加えて、筋肉を収縮させる効果 と 筋肉の緊張を緩和させる効果 があります。

・ 20〜50Hzの低周波振動 ⇨  筋肉を収縮させる効果

・ 50Hz以上の高周波振動 ⇨ 筋肉の緊張を緩和させる効果

振動療法では50Hzを境界線とし、それ以下を「低周波」、それ以上を「高周波」と分類しています。

低周波(20〜50Hz)の振動 は、脳卒中や脳梗塞による麻痺(腕や脚など)のリハビリに使用され、筋肉の収縮を促します。

一方、50Hz以上の高周波の振動 は、痛みの軽減や筋肉の緊張緩和を目的として使用されます。

FVTでは、この周波数帯の振動をより効果的に活用し、症状の改善を目指します。

IMG_4314.jpeg

 

◾️FVT がもたらす効果

高周波振動でトリガーポイントを集中的に刺激することで、以下の効果が期待できます。

1.痛みの緩和(痛みセンサーの感作から脱感作へ) 

感作とは:痛みの刺激に対して過敏な状態になることを指し、これが慢性的な痛みの原因となります。

FVTでは、振動によって痛みセンサーを刺激し、脳への痛み信号を遮断する「ゲートコントロール理論」に基づいたメカニズムが働きます。これにより、痛みの感覚が和らぎます。

2.筋肉の緊張緩和

筋紡錘や腱紡錘(筋肉や腱にあるセンサー)を刺激することで、筋肉の緊張を緩和し、柔軟性を高めます。

3.血行促進と酸素供給の向上

振動による血管拡張作用によって血液循環が改善され、酸素や栄養素の供給がスムーズになります。これにより組織の回復が促されます。

4.自然な鎮痛作用(エンドルフィンの放出)

振動刺激により、脳内で「エンドルフィン」と呼ばれる自然の鎮痛物質が分泌され、痛みが軽減されます。

5.副交感神経の活性化とリラックス効果

心地よい高周波振動が、自律神経のバランスを整え、副交感神経を優位にします。その結果、以下のようなリラックス反応がみられることがあります。

・眠くなる

・呼吸が深くなる

・胃腸の動きが活発になる(お腹がなる・排泄が促される)

・鼻水が出る

6.睡眠の質の向上

痛みやストレスが軽減されることで、深い睡眠を得やすくなり、心と身体の回復をサポートします。

FVTは、痛みの緩和だけでなく、心身のリラックスや健康維持にも役立つ施術法です。

2025-03-18 17:00:00

施術を受ける頻度と期間

施術の効果を十分に引き出すためには、ある程度の回数と時間をかけることが大切です。

◾️ 慢性的な症状がある方

・週2回のペースで1〜2ヶ月間

・週1回のペースで2〜4ヶ月間

⇨ 症状の重症度や生活習慣によって、適した頻度は異なります。

◾️ 比較的軽い症状の方

・症状が出ている期間が短い場合

・トリガーポイントの数が少ない場合

⇨ 数回〜5回程度の施術で改善することが多いです。 

◾️ 長期間(数ヶ月〜数年)続いている症状の方

・トリガーポイントが数が多い、広範囲に及んでいる場合

・組織の癒着が強く、症状が複雑な場合

⇨ 数ヶ月にわたる継続的な施術が必要になることもあります。

 

症状の改善や回復のスピードには個人差があります。

2025-03-15 18:00:00

お一人おひとりの 『痛みストーリー』

慢性的な痛みでお困りの患者さんには、お一人おひとりの『痛みストーリー』があります。

『痛みストーリー』には『患』と『トリガーポイントを見つけるためのヒント』が隠されているので、はじめての方からは『痛みストーリー』をじっくりと聴かせていただきます。

痛みの当事者は患者さんですから、どんな時に、どこにどんな痛みを感じて、どれだけ辛いのかは、患者さんにしかわかりません。

そして、患者さんには患者さんの思いや考えもあります。

『こんなに話を聞いてもらったことはなかった』とおっしゃる方もいますが、患者さんが話したいことも話せなければ、不安や不満を抱えて帰宅することになり、施術の結果にも大きく影響することになります。 

 

患者さんの『患(かん)』を辞書で調べると『うれえる・心配・苦しみ』と書いてあります。

そして『うれえる』は 

① 悪い状態になるのではないかと心配する

②(よくない状態を)嘆き悲しむ

とあります。

 

『患』は『心』に『串』と書きます。

私は、『心の串』=『うれえる・心配・苦しみ』 だと思っているので、心の串を取り除くことも施術だと考えています。

心の串を吐露されて時には涙を流される方もいますが、おひとりさま対応だからこそ話していただけるのだと思います。

痛みは『感覚的な痛み(からだ)』と『情動的な痛み(心)』の二面性です。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ...