そよ風 note
④『痛みやしびれが慢性化するしくみ』
痛みやしびれは、以下のしくみで慢性化していきます。
このしくみを『痛みの悪循環』と言います。
※1:痛み信号が『脊髄(小さい脳)』に入ると、脊髄の反射により筋肉が収縮する。
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※2:痛み信号が『脳』に届くと、交感神経が反応して筋肉と血管が収縮する。
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※3:ストレスにより『痛みの閾値』が下がる。
(痛みを感じやすくなり、痛み再発のきっかけにもなる)
痛みや身体に対する誤った思い込みは、慢性化に拍車をかける。
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※4:交感神経の緊張(アドレナリンの過剰分泌)により、血管・筋肉が持続的に収縮する。
アドレナリンの短期的な分泌は、身体のパフォーマンスを上げるのによい働きをしますが、長期的な分泌は賢明ではありません。
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※5:睡眠の乱れ(夜間の不眠や日中の眠気)により『痛みの閾値』が下がる。
(痛みを感じやすくなり、痛み再発のきっかけにもなる)
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※5:筋肉は運動神経と交感神経によってコントロールされている。
交感神経緊張 =『闘争か逃走か(闘うか逃げるか)』反応
その反応の準備として(以下の理由により)、背中の筋肉やハムストリング、僧帽筋などの大きな長い筋肉が緊張する。
・大きなトルク(関節を動かすための力)を生み出すことができるから
・複数の関節をまたいでいるから
・大きく短縮することができるから
これらの筋肉が繰り返し緊張すると『硬さ・凝り・痛み』(肩こり・腰痛・膝痛など)を感じやすくなる。
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※6:血行障害により、局所的に低酸素状態(酸欠)になる。『知覚の異常』も起こり『しびれ』を感じやすくなる。
このしくみが繰り返されると、痛み受容器が過敏化して些細な(肉体的・精神的)ストレスにも反応するようになり、症状は慢性化していきます。
⑤『痛みやしびれが改善するしくみ』
腰痛をはじめとする慢性化した痛みには、痛みを起こしている部位の問題だけではなく、痛みに対する心理的な因子(不安や恐怖)も痛みの悪化や慢性化に関与しています。
『トリガーポイントの鎮静化(身体の機能的な回復)』と『痛みを正しく知る(心理的な支援を得る)』ことで、 痛みに対する不安や恐怖が軽減し、多くの痛みは自然に治っていくのです。
痛みやしびれは以下のしくみで改善していきます。
このしくみを『改善の好循環』としました。
※1:トリガーポイントが鎮静化すると、些細なストレスに反応しなくなる。
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※2:痛み信号の発信回数が減ると、痛みが小さくなり、痛む時間も短くなる。
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※3:『痛みを知る』ことで、痛みに対する不安や恐怖が軽減する。
『痛みの閾値』が上がる。(痛みを感じにくくなる・痛み再発の防止にもなる)
たとえ痛みを感じても、以前のような不安や恐怖がなくなる。
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※4:交感神経の緊張が緩むと、アドレナリンが過剰に分泌されなくなる。
血管が拡張して血行がよくなる・筋肉の緊張が緩和する・眠れるようになる
『痛みの閾値』が上がる。『眠りは王様』
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※5:血液の流れが改善すると、しびれを感じなくなる。
急激な血流量の増加も起きなくなる。
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※6:酸素と栄養素が十分に行き届くと、発痛物質(ブラジキニン)の産生が減少する。
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※1:受容器が反応する回数が減ると、トリガーポイントはさらに鎮静化する。
施術を重ねることで
トリガーポイントが鎮静化していく
+
痛みやしびれのしくみを知る
⇩
動いてみる
⇩
『前ほど痛くないな・・・』
『痛みも長引かないな・・・』
『動けるぞ・・・』
⇩
痛みや身体に対する
不安や恐怖が軽減していく
⇩
ポジティブになる
自信がもてる
笑えるようになる
気分も高揚する
⇩
痛みの閾値が上がる
⇩
痛みなく、動けるようになる
⇩
さらなる好循環
⇩
『そう言えば、最近痛くない。』
<よくある会話>
私:「最近、◯◯の痛みはいかがですか?」
患者さん:「あっ、◯◯の痛み。忘れてました。」
私:「ならよかったです。そのまま忘れちゃってださい。』
(^○^)
筋膜はボディスーツ
皮膚の下には、浅いところにある『浅筋膜』と、深いところにある『深筋膜』があります。
筋膜は、頭のてっぺんから足の先まで繋がっていて、連続体として機能しています。
皮膚も連続体ですが、その下には筋膜という『ボディスーツ』を重ね着しているのです。
皮膚を部分ごとに分けることができないように、筋膜も分けることはできません。
身体が倒れないように姿勢を保ちながらも複雑な動きができるのは『筋膜・ボディースーツ』のおかげです。
顎関節症とトリガーポイント
顎関節症は、程度の差こそあれ、2人に1人は経験すると言われています。
私も経験者の1人なので、あの痛みと辛さはよくわかります。
顎関節症を引き起こす要因を1つに絞ることはできませんが、噛み合わせの悪さや身体の歪みは含まれないと言われています。
近年では、歯ぎしりや食いしばり、心理社会的なストレス、歯科治療での開口保持などが主な要因として挙げられています。
現在、顎関節症は以下の4つに分類され、「筋性」と「関節性」の2つに分けることができます。
<顎関節症の病態分類(2013)>
1型:咀嚼筋痛障害 「筋性」
2型:顎関節痛障害 「関節性」
3型:顎関節円板障害 「関節性」
4型:変形性顎関節症 「関節性」
※ 重複する場合もあります。
この中で、顎関節症の患者さんの多くは、1型:※ 咀嚼筋痛障害(口を大きく開けられない、ご飯を食べるときに痛いなど)です。
※ 咀嚼筋(そしゃくきん)とは:下顎を上下に動かして、あくびをしたり、食べものを噛んだりするときに使う筋肉。
①:側頭筋(そくとうきん)
②:咬筋(こうきん)
③:外側翼突筋(がいそくよくとつきん)
④:内側翼突筋(ないそくよくとつきん)
筋膜性疼痛症候群(トリガーポイント)では、咀嚼筋を以下のよう捉えます。
① 側頭筋:顎関節症の主要な原因となる筋肉。
② 咬筋:重度の開口制限の原因となる筋肉。(身体の中でもっとも強力な筋肉)
③ 外側翼突筋:顎関節症を治療する際に鍵となる筋肉。
④ 内側翼突筋:顎関節症を治療するためには必要不可欠な筋肉。
※ ③と④は、顎の内側(口の中)にあるため触診が困難なことから、治療できる施術者は限られます。
『患者さんが顎の痛みを訴えているときに、内側翼突筋を治療しないのは間違っている』(Neuromuscular Therapy Manual より)
しまだでは、① 〜 ④ のすべてのトリガーポイントに治療をおこなうことにより、ほとんどの方が1回の施術で痛みなく開口できるようになります。
※ 発症から3ヶ月以上経過(慢性化)している場合、痛みなく開口できるようになっても噛むときに痛みが残るケースがあります。そのときはトリガーポイントのさらなる鎮静化のために継続した施術が必要になります。
以下の ①と② の症状が、1週間以上続いている方は早めにご相談ください。
【顎関節症の症状】
通常、口を大きく開けた場合、ご自身の指(人差し指・中指・薬指)が縦に3本分入ります。
顎関節症になると、指が2本分、またはそれ以下しか入らなくなります。
① 顎が痛む
・口の開け閉め、食べ物を噛むときなどに痛む
・硬いものが食べられない
② 口を大きく開けられない
・縦に指が2本程度、またはそれ以下しか入らない
・お寿司やおにぎりが食べられない
・大きなあくびができない
※ 口を開け閉めしたときに「カクカク」「ジャリジャリ」といった音がすることがありますが、症状が音だけで痛みを伴わず、指も縦に3本入る場合は治療する必要はないとされています。
※ たとえ噛み合わせを治しても、顎関節症が改善するとは限りません。治療費が高額であったり、歯を削ったりする治療法を提示されたときは慎重になったほうがよいでしょう。
※『顎関節症の原因は不明ですので、噛み合わせが悪いとか、体のバランスに問題があるとか、いかにも原因治療としている宣伝に安易に惑わされないことを勧めます。』(厚生労働省のe-ヘルスネットより)
【症例1】
60歳代 女性
10年ぶりに右顎の痛みと開口障害発症。
主訴:口が大きく開けられない。ご飯を食べるのが痛い。
施術前:痛みを伴う開口制限(指が2本まで)
触察の結果、各咀嚼筋(口腔内は右上下部)にトリガーポイントを確認
施術後:痛みなく指3本分の開口可能となる
【症例2】
50歳代 女性
歯科の検診で30分ほど開口を保持した後、左顎の痛みと開口障害発症。
担当の歯科医師に相談したところ
「これは治らないので、マウスピースで様子をみましょう」
「最終的には手術になるかもしれません」とのこと。
主訴:ご飯を食べるのが痛い。口が大きく開かない。
施術前:痛みを伴う開口制限(指が2本以下)
触察の結果、各咀嚼筋(口腔内は左上部)にトリガーポイントを確認
施術後:痛みなく指3本分の開口可能となる
マウスピースも手術も不要になりました。
顎関節症は、時間の経過とともに自然に改善することもありますが、慢性化してしまうこともあります。
マウスピース(スプリント)を装着して数ヶ月経過をみることもあるようですが、慢性化を防ぐためにも1日も早く痛みなく開口できるようになる(トリガーポイントを鎮静化させる)ことが先決です。
顎関節症も筋膜性疼痛症候群(トリガーポイント)と捉えて対処すると、多くの患者さんが短期間でよい結果を得ることができます。
健康保険の取扱いについて
私は柔道整復師の資格を有していますが、肩こりや腰痛などの慢性的な症状(筋膜性疼痛症候群)は、健康保険の対象となる『外傷性が明らかな原因によって発生する 骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷(肉離れ)などの損傷』には該当しないため、健康保険を利用することができません。
柔道整復師による整骨院または接骨院の看板には『各種保険取扱い』と表示していることがありますが、健康保険が利用できるのは以下の限られた場合です。
【 健康保険が利用できる場合 】
〇 ねんざ・打撲・肉離れの施術
〇 医師の同意がある骨折・脱臼の施術
〇 応急処置で行う骨折・脱臼の施術(応急処置後の施術には、医師の同意が必要)
【 健康保険が利用できない場合(全額自己負担)】
〇 肩こりや疲労など(疲労回復やリラクゼーション)のための施術
〇 病院で「椎間板ヘルニア」「脊柱管狭窄症」「変形性膝関節症」などと診断された症状に対する施術
〇 負傷(けが)が原因ではない痛み(慢性的な頭痛や腰痛、五十肩やひざ痛など)
〇 「骨盤矯正」や「姿勢矯正」などの施術