そよ風 note
腰痛のナゼとナゾ “ 治らない “ を考える
海外の研究では、スイスからの報告に、画像診断を受けた健常者の76%に無症状の椎間板ヘルニアがみられたという研究があります。
また、フィンランドの研究によると、腰痛経験者の約半数が、MRIによる画像検査で椎間板に変性がみられない正常の所見だったことがわかり、「腰痛と椎間板変性との間には関連性がない」と結論づけています。
さらに米国からは20歳から80歳までの腰痛や脚の痛みを経験したことがない人々の画像診断の結果、21〜36%に椎間板ヘルニアが、50〜79%に椎間板膨隆が、34〜93%に椎間板変性がみられたと報告されるなど、従来のように「ヘルニアの存在 = 腰痛の原因」とする考え方を否定する研究結果が相次いでいます。
「腰痛のナゼとナゾ “治らない“を考える」より
著者:福島県立医科大学 理事長兼学長 菊池臣一
出版社:メディカルトリビューン
トリガーポイントの発生から痛みが慢性化するしくみ
【 トリガーポイントの発生 】
筋膜のトラブルが発生すると、その部分の血液の流れが阻害され、その部位が『酸素欠乏』になります。
酸素欠乏が起きると、血液中の血漿から『ブラジキニン』などの発痛物質が生成され、知覚神経(C線維)の先端にある『ポリモーダル受容器』に取り込まれて『痛み』を感じます。
このような状態から発生した圧痛点(痛みの発信源)を『トリガーポイント』と呼びます。
【 痛みの慢性化(悪循環)】
『トリガーポイント』からの痛み信号を捉えた『脳と脊髄』が、反射的に交感神経を働かせます。
その結果、トリガーポイント周辺の『筋肉と血管の収縮』が起こり、再び酸素欠乏が発生して発痛物質が生成されるという『痛みの慢性化(悪循環)』が起こります。
その腰・肩・ひざの痛み治療はまちがっている ! その②
日本は痛みの治療に関して、先進国の中ではもっとも遅れていて、患者中心の医療は、厚生労働省の調べによると、世界で遅れている科学技術のワースト10に入っていると報告されています。
なんと10〜20年もの遅れがあると言われているのです。
海外では、椎間板ヘルニアの手術はほとんど行われなくなってしまったそうです。
現在の整形外科の診断や治療法は、「痛みの生理学」の昔の言い伝えによるものなのです。
こうした古い理論と発想で痛みをとろうとしても、痛みはなくなりません。
そのことを知らない医師に治療を受けていることが、みなさんを苦しめている慢性痛が治らない、根本の理由なのです。
「その腰・肩・ひざの痛み治療はまちがっている!」より
著者:医師、医学博士 加茂 淳
出版社:廣済堂出版
その腰・肩・ひざの痛み治療はまちがっている ! その①
慢性の痛みに悩まされている方は、現在、日本国内で約2,300万人もいると言われています。
パーセントでいえば、日本の全人口の19パーセントにものぼる方が慢性痛を抱えているわけですから、見すごすことはできません。
ところがこれらの痛みに関しては、これまでも有効な治療がほとんどなされてきませんでした。
それはなぜでしょう。このような慢性痛は治らないのでしょうか?
そうではありません。
何をしても痛みがなくならないのは、そもそも診断と治療法がまちがっているからです。
「骨や関節に異常がなければそのうち痛みは治まる」
「ヘルニアがあるから神経が圧迫されて痛いのだ」
「腰椎がすべり症を起こしているから痛みが生じているのだ」
「ひざの痛みは半月板が損傷しているからだ」など、
現在の整形外科治療で主流となっている考え方は、じつは100年も前からの生理学が発達していない時代の伝統的な考え方なのです。
驚かれたでしょうか?
「その腰・肩・ひざの痛み治療はまちがっている!」より
著者:医師、医学博士 加茂 淳
出版社:廣済堂出版
スーパーヘルシーの秘薬 『PGC1−α』
運動をすると、筋肉から『PGC1−α』というスーパーヘルシーの秘薬が出現します。
PGC1−αが出現すると、エネルギーが補われて筋肉の萎縮を防ぐことができます。
その他にも、慢性炎症 を抑える作用、老化を防ぐ作用、認知機能と記憶力の低下を防ぐ作用があり、健康と若さを保つ重要な働きをしています。
しかし、弱い運動と強い運動(後述)では、分泌される物質が異なります。
強い運動を続けた場合は、炎症性サイトカインという物質が急増して慢性炎症を促進することになるので、弱い運動を続けることが大切です。
また、PGC1−αには筋力を増強する作用もありますが、弱い運動と強い運動では得られる筋肉も異なります。
強い運動(ランニング、水泳、筋肉トレーニングなど)をおこなっていると、大量のカルシウムが(一定の間隔で)放出されるようになり、速い収縮に適した筋肉が得られます。(筋肥大が起こり、筋肉隆々になります)
それに対して、弱い運動(持久運動)をおこなっていると、少量のカルシウムが(回数多く)放出されるようになり、持久力のある疲れにくい筋肉が得られます。
弱い運動とは、歩行(散歩)、駅の階段昇降、自転車での通勤、家事労働、買い物、農作業など、額に汗がうっすら浮かぶ程度の日常的に継続可能な有酸素運動です。
酸素を多く取り入れながらの運動は疲労が起こりにくいため、長時間の運動が継続可能になります。
健康と若さを保つには、ゆっくりした持久運動が適しています。
参考文献:『慢性痛のサイエンス 脳からみた痛みの機序と治療戦略』 半場道子著 医学書院 2018